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2006.08.19

四国、よいとこ 720 与謝野晶子さんの「旅順の攻囲軍にある弟宗七を歎きて」の詩。

 二〇〇六年八月十九日。

 与謝野晶子さんの昭和天皇の侵略戦争後押しの短歌について考える上で、彼女が、明治天皇の侵略戦争・日露戦争のさなか、『明星』一九〇四年九月号に発表した詩についてふれておくひつようがあります。
 「君死にたまふことなかれ (旅順の攻囲軍にある弟宗七を歎きて)」です。

 ああ、弟よ、君を泣く、
 君死にたまふことなかれ。
 末(すゑ)に生れし君なれば
 親のなさけは勝(まさ)りしも、
 親は刄(やいば)をにぎらせて
 人を殺せと教へしや、
 人を殺して死ねよとて
 廿四(にじふし)までを育てしや。

 堺(さかい)の街のあきびとの
 老舗(しにせ)を誇るあるじにて、
 親の名を継ぐ君なれば、
 君死にたまふことなかれ。
 旅順の城はほろぶとも、
 ほろびずとても、何事(なにごと)ぞ、
 君は知らじな、あきびとの
 家(いへ)の習ひに無きことを。

 君死にたまふことなかれ。
 すめらみことは、戦ひに
 おほみづからは出(い)でまさね
 互(かたみ)に人の血を流し、
 獣(けもの)の道(みち)に死ねよとは、
 死ぬるを人の誉(ほま)れとは、
 おほみこころの深ければ、
 もとより如何(いか)で思(おぼ)されん。

 ああ、弟よ、戦ひに
 君死にたまふことなかれ。
 過ぎにし秋を父君(ちゝぎみ)に
 おくれたまへる母君(はゝぎみ)は、
 歎きのなかに、いたましく、
 我子(わがこ)を召(め)され、家(いへ)を守(も)り、
 安(やす)しと聞ける大御代(おほみよ)も
 母の白髪(しらが)は増さりゆく。

 暖簾(のれん)のかげに伏して泣く
 あえかに若き新妻(にひづま)を
 君忘るるや、思へるや。
 十月(とつき)も添はで別れたる
 少女(をとめ)ごころを思ひみよ。
 この世ひとりの君ならで
 ああまた誰(たれ)を頼むべき。
 君死にたまふことなかれ。

 「すめらみこと」、つまり明治天皇を引き合いに出していることが、この詩のインパクトを高めていました。

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