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2006.08.19

四国、よいとこ 718 与謝野晶子さんの短歌、「水軍の大尉となりて我が四郎み軍(いくさ)にゆくたけく戦へ」。

 二〇〇六年八月十九日。

 歌人の三枝昂之(さいぐさ・たかゆき)さんが愛媛新聞八月十一日付に、与謝野晶子さんの晩年の短歌を紹介しています。
 短歌雑誌『冬柏』一九四二年一月号に載ったものだといいます。

 戦(いくさ)ある太平洋の西南を思ひてわれは寒き夜を泣く

 水軍の大尉となりて我が四郎み軍(いくさ)にゆくたけく戦へ

 子が船の黒潮越えて戦はん日も甲斐(かい)なしや病(やま)ひする母

 この三首です。
 「四郎」というのは晶子さんの四男(一九一三年二月生まれ)のことで、海軍大尉でした。
 晶子さんが、かって詩にうたったアウギユスト君のことです。

    我家の四男

 おもちやの熊(くま)を抱く時は
 熊の兄とも思ふらし、
 母に先だち行(ゆ)く時は
 母より路(みち)を知りげなり。
 五歳(いつゝ)に満たぬアウギユスト、
 みづから恃(たの)むその性(さが)を
 母はよしやと笑(ゑ)みながら、
 はた涙ぐむ、人知れず。

    アウギユスト

 アウギユスト、アウギユスト、
 わたしの五歳(いつつ)になるアウギユスト、
 おまへこそは「真実」の典型。
 おまへが両手を拡げて
 自然にする身振の一つでも、
 わたしは、どうして、
 わたしの言葉に訳すことが出来よう。
 わたしは唯(た)だ
 ほれぼれと其(そ)れを眺めるだけですよ、
 喜んで目を見張るだけですよ。
 アウギユスト、アウギユスト、
 母の粗末な芸術なんかが
 ああ、何(なん)にならう。
 私はおまへに由(よ)つて知ることが出来た。
 真実の彫刻を、
 真実の歌を、
 真実の音楽を、
 そして真実の愛を。
 おまへは一瞬ごとに
 神変(しんぺん)不思議を示し、
 玲瓏(れいろう)円転として踊り廻る。
 
 このころの晶子さんの様子を書いておきます。
 三五年三月二十六日、夫・寛が死去。
 三七年三月十二日、脳溢血(のういっけつ)で倒れました。一か月病床に。
 四〇年五月に二度目の脳溢血で倒れました。
 以後、右半身不随の病床生活となります。
 八月、二女・七瀬のすすめでカソリックの洗礼を受けます。
 そして、四一年十二月八日の昭和天皇の太平洋戦争開戦…。
 この短歌は、このころのものでしょうか。
 〇四年、明治天皇の日露戦争に従軍の弟を思う詩「君死にたまふことなかれ」と比べると、彼女の戦争観はどうだったんだろうと考えてしまいます。

 四二年五月二十九日、晶子さん死去。

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