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2007.07.09

高知県 『歌集 少年から青年へ』。

 二〇〇七年七月九日。

 以下、七月二十日に改善したものです。


 歌集 少年から青年へ

 

   父、母のこと

弾丸を胸に宿した父でした 従軍のこと沈黙のまま

母がすく紙加工して風船の爆弾にした 君が代の国

大阪は戦争終えた父、母が 出会い結ばれ僕を得たとこ

「この街の瓦礫(がれき)の中で産んだの」と 語った母と語るすべなく

父、母も紙工場で糧を得て 僕ら育てた紙の町・伊野

昼休み、倒れて逝った僕の父 「過労死」という いま言葉では

亡き父が勤めた工場(こうば)がなくなった 作業着の父、門に消えた日

息子への手紙を書いて父思う 確か一枚、はがきがあった

グローブと同じだったね母の手は さらし粉使う紙すきのさが

「ガハハハハ」、豪傑笑い耳にして いまは亡き母思い出してる

復員の兵の長男 わが歳も六十になる 九条の子が

   戦争寡婦の戦後

小娘のわが伯母殿もストの群れ 高知市旭の片倉製糸(かたくら)の跡

三十を過ぎていましたわが伯父は 根こそぎ男に銃を持たせた

いつ、どこで、どんなふうにもわからずに 戦死公報、空の骨箱

伯父たちの三百七十九人名を刻む 紙の伊野町、「忠霊」の塔

軍服の伯父の遺影が見ていたよ 伯母に頼ったわが家の暮らし

家を出て尼の修行の日々もある 戦争寡婦の切ない暮らし

「四四年八月十日、グアムで死す」 「お知らせ」がきた 七七年

伯父が死ぬ半年前の手紙読む 「一意報国」、悲しい言葉

コオロギの声に託して 寡婦、伯母が 悲しみつづる日記に見入る

   貸本屋に通った道

貸本屋 学齢前から通ったね 手塚治虫(てづか・おさむ)と 仲良くなった

こんなにも狭かったのか この道は 漫画抱えて歩いてた道

米もらい ポン菓子を待つつじのこと 「ポーン」の爆発「ヤッホー。できた」

   小学校一、二年生のころ

どうしても靴の左右がわからずに困っていたね 入学のころ

自転車の荷台にすがり「乗せてって!」 せがんで泣いた小一のころ

好きな娘(こ)のブランコ取った先輩と格闘したね 僕の小一

「ゴジラ」見た小学二年 水爆のアメリカなんかきらいになったよ

映画館、みんなでいって楽しんで それが授業という日もあったね

   わが家の食卓のクジラ   

あのころの、わが家の食卓 クジラ肉 うまさ思えば母思い出す

腐り飯、干しておやつに出した母 貧しさからか子への愛から

食堂のきつねうどんが大ごちそう ごはんで増やし食べた母と児(こ)

   紙芝居のおじさん

拍子木がチョン、チョンと鳴り飛んで出た 紙芝居だよ、小学時代

水あめをなめなめ見入った紙芝居 「君の名は」などやってた記憶

B29(ビー)のこと教えてくれたね 紙芝居、語る合間に 傷痍軍人(しょういぐんじん)

フラフープやったもんだね くるくると 紙芝居屋がやってきたころ

わが家にも白黒テレビやってきて 紙芝居屋がいつしか消えた

   僕が拾ってきた子犬

あの子犬、どうなったのか 父が捨て僕が一日泣いた、あの夜

飼っていた僕のウサギが知らぬ間に食卓にいて 煮えていた夕

学級費、せがんで泣いた小学のあの日思えば 父母の渋顔

この道は新聞少年、この僕が 毎朝夕を走ってた道

実り田のあぜに咲く花、マンジュシャゲ 幼いころになじんだシーン

あの山の向こう側には野蛮のみ 少年の日の狭い了見

   中学校に入学して

「おお、僕も宙を舞えるよ」 中一の僕、体操部員

旭(あきら)派と裕次郎派が競い合い 帽子にロウぬり気取ってたころ

女子たちのお尻を触る教師いて 音楽嫌いの生徒になったね

「おい、お前。まじめ過ぎるぞ」 短刀で脅されたよね。中学時代
 
   勤務評定反対のころ

あの塀の「にあんちゃん」のポスターが、ふとよみがえる 映画思えば

教師らの純粋うたう映画だな 妻にも見せたい「人間の壁」

教師への勤務評定反対と 紙すく母も加わった町

勤評に僕も反対 中学生 好きな教師と同じ輪にいた

勤評の同盟休校、写真見る 弟、どこかで笑っているはず

「うたごえ」も守ってくれてた僕たちを 「子供を守る…」の歌に聞き入る

戦前の日本共産党(とう)の存在 映像で初めて見た日 「武器なき斗い」

中学の僕も手に入れ読んでみた 『共産党宣言』 「武器なき…」を見て

中学の僕を燃やしたあの映画 「宅配映画屋」、持ち込んでいた

   高校生のころ

色白が岩波文庫貸してくれ 体操少年、文学の子に

バスに乗り手を差し出した瞬間の 恥じらいの顔 走る電流

ああ、やっと、あの娘(こ)と一緒 フォークダンスの柔らかな手よ

城跡で自由を説いて職を辞す 一年習った僕らの恩師

カネのない僕らを招き無料塾 二年続けた数学教師

担任がつないでくれたアルバイト 家庭教師で学費が払えた

夏休み コカコーラ車の助手になる 二ケース持って汗はぐたぐた

あのひげのシャイな男に誘われて ホームみんなで山にいったね

「ああ、これも」あの娘(こ)と一緒に写ってる 九州一周・修学旅行

「♪匂い優しい白百合の…」髪飾り見て授業が終わる

点数の順に人の名張られてる 映画のシーン わが高校のとき

主役らが「これでいいとや!」 叫んでる その高校生もあのときの僕

「高校は民主の場だよ」 議論してビラを作った仲間のあの顔

高校を批判したビラ 仲間らと 正門に立ち まいた十七

「なぜビラを?」 澄んだ瞳の問いかけに 熱弁したね 電車で会って

   大学生になって

体型も精神面もがりがりで目だけが燃えてた 大学一年

センダンの大学の庭 「うたう会」 音痴の僕が歌い始めた

ガリ版で文集つくった日のことを 文科一年 覚えているか

級友とママチャリに乗り数日間 走ったことを、ふと思い出す

「仲間」知り「仲間」増やして手を結ぶ大収穫の 十八の初夏

「サークルの部室壊すな」 空手部も一緒に燃えた夜中の団交

夏の日の代表派遣のカンパ箱 「原爆なくせ」の思い語って

元兵舎、自治会室に陣取って ビラを切ってるガリ版の音

校門でビラまく学生記憶して センダン花は ほほ笑んで咲く

カンパ得て全学連旗つくったね 再建二年、みんなの自治会

ベトナムの子を抱く母の貯金箱 僕も貯めたよ 支援の思い

   日本共産党(とう)に入った日

「僕もまた、多喜二のように」 恐れつつ入党決めた十八のとき

世の中の母たち笑う日よこいと 入党用紙に 書いた十八

辷山(すべりやま) 学生同志集まって 地底(じぞこ)の歌」を教えてもらった

日本共産党(とう)の旗、はためいている城のわき 辷山(すべりやま)下 党県事務所

「ああ、ここに」 森田正喜の墓碑を読む 四七年、日本共産党(とう)県委員長

   長い髪の年下の娘(こ)

新入の長い髪の娘(こ)現れて「私も仲間よ。よろしく」という

夏の雨 市営グランド襲う中 友と腕組むうたごえ祭典」

長マフラー、君と僕とを包み込み 送っていったね。君の家まで

年下の女性(ひと)のバイトの金借りて生きのびていた 学生のころ

「結婚は?」「二十五くらいね」 六年後! 拒否と受け取り身を引いた午後

   何人目かの初恋の女性(ひと)

自治会の委員長、僕 大会の書記をした君 確か、そんな出会い

原理研 そんな宗派にいきそうな 君に「やめろよ」 僕、救い主

アメリカとたたかいぬいてたベトナムが 君の心を静かに変えたね

烈風に向かって髪をなびかせて前見詰めてた そのころの妻

昼食は学生会館 いつもパン 四十年後もパン食の君

「好きな人、いて悩んでる」 「だれ、それは?」 「君だよ!」なんて きざなせりふだ

   巣立ちのころ

センダンの薄紫花(うすむらさきばな)咲いてるか 三年で出た大学のこと

このあたり 全商連の新聞を配っていたね 自転車駆って

ソ連らのチェコ侵略に抗議する われらが「旗」に歓喜したとき

結婚をとまどう君を「プチブル」と批判した僕 若気の勝利

上京し日に一通のラブレター 一年半も 高知の君に

「山原」の初当選を支えぬき 卒論駆け込み君は世に出る

上京の僕を追いかけ、やってきて 教師になって君が始まる

「僕なんか、腕時計もない」 「愚痴やめて! 買ってやるわよ」 婚約時代

「学習を毎日二人でできるよね」 式の前後の「理想の家庭」

   高校、大学の友たち

「定年になったらきなさい。教えるわ」ピアノ教師の高校の友

ふるさとの元日行事は墓参り 恩師をしのぶ 二組夫婦

高校の恩師の思想受け継いで 無料塾やる友の熱情

定年し日本共産党(とう)アナウンサーやっている 元寮長の張り切った声

十八の光の姫のそのままに歳を重ねた僕の後輩

大学でともに学んだ後輩が、いま継いでいる 「宅配映画屋」

九条の絵手紙かいて広げてる 看護士さんは僕の後輩

「党支部でがんばってるわよ」 後輩の電話の声の晴れやかなこと

すれ違いゲバ棒人(げばぼうびと)になったとか どうしているのか年下の彼

僕も寝ることにしましょう。

  【お誘い】

  日常のドキュメント・「田辺島発」にも、どうぞ。
  http://fujihara.cocolog-nifty.com/tabesima/

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