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2008.05.29

後期高齢者医療制度の廃止を、なぜ求めるのか 導入後二カ月に当たって

 二〇〇八年五月二十九日。

 

  自民党のホームページに「長寿医療制度テレビCMを発表」という記事が載っています。 

 「わが党が制作した長寿医療制度(後期高齢者医療制度)のテレビCMが完成し、河村建夫広報本部長と野田聖子広報局長が(5月)27日、党本部で記者発表した。CMは元衆院議員の浜田幸一氏(79)が同制度に加入するお年寄りの代表として、わが党を叱咤激励する内容。画面いっぱいに映し出された浜田氏が『自民党はおじいちゃん、おばあちゃんを大事にする政党なんだろ。だから制度をつくったんだろ』と同制度を導入した理由を視聴者に力強く訴え、『かわいい子供たちのためにも頼むよ!自民党!』と締めくくっている。30日から沖縄県で放送を開始し、党ホームページやLDPチャンネル(You Tube)でも放映される。」

 このCMは、自民党のホームページの次のページで見ることができます。

 http://jp.youtube.com/watch?v=QPBICWwKVZ

 長寿医療制度、つまり後期高齢者医療制度への国民の批判を「捨て身の正面突破作戦」で乗り切ろうというものです。

 しかし、私は、このコマーシャルは、この政権の命取りになるのではないかと思っています。

  私が、この制度への批判で、一番ぴんときたのは、ことし一月七日に放映されたテレビ東京系「主治医が見つかる診療所」での北海道の旭川赤十字病院の脳神経外科医の上山博康さんの、つぎのような発言です(日本共産党中央機関紙「しんぶん赤旗」二〇〇八年一月九日付)。

  「(後期高齢者医療制度は)七十五歳以上にはまともな医療は受けさせないで、医療費を削減しようということだ」

  「七十五歳になったら、『長生きおめでとうございます。今日から医療費の心配はいりません』というならわかるが、逆に年金から天引きで負担が増えていく。しかも四月からの診療報酬改定で、七十五歳以上の方の治療をやるほど、病院が赤字になる仕組みができたら差別医療になりかねない」

  「やがて公園に死体が転がる時代になる」 

  「施行するのが理解できない」

 五月二十五日朝のNHKの日曜討論は、政府、各党の代表の討論でしたが、タイトルは「後期高齢者医療制度 見直しか? 廃止か?」でした。

 四月一日の、この制度の発足から、もうすぐ二カ月ですが、すでに、「そのまま存続」と、いうことは問題にされていません。

 それほど、この制度には問題があるということだと思います。

 五月に入ってからの各世論調査でもこの制度を「廃止すべきだ」は、共同通信で46・5%、ANNで62%と高率です。私も、この法案は廃止すべきだと思います。

 以下、後期高齢者医療制度の問題点をみながら、「廃止すべきだ」の理由をのべます。

 【後期高齢者医療制度の役割】

 政府は、七十五歳以上の人(政府は、後期高齢者と呼んでいます)全員を、これまで加入していた国民健康保険や健康保険から脱退させ、七十五歳以上の人だけが加入する新しい独立の医療保険制度に組み入れました。 それが、後期高齢者医療制度です。

 なぜ、こういう制度をつくったのでしょうか。 厚生労働省の社会保障審議会の特別部会報告に、その本音が書かれています。

 そこでは「後期高齢者の心身の特性」について「老化に伴う生理的機能の低下により、治療の長期化、複数疾患への罹患(りかん)が見られる」「多くの高齢者に……認知症の問題が見られる」「いずれ避けることができない死を迎える」とまとめています。

 また、厚生労働省は、この制度によって二〇一五年までに五兆円の医療費が削減できるという試算を示しています。

 後期高齢者医療制度の解説書、『高齢者の医療の確保に関する法律の解説』(二〇〇八年二月発行・法研)が出ています。編著者は、同制度創設に携わった土佐和男・高齢者医療制度施行準備室室長補佐です。

 この解説書の「後期高齢者の診療報酬体系の必要性」の所で、四月からの診療報酬(医療の値段)で、七十五歳以上だけ別建ての終末期医療の診療報酬体系を新設した理由を解説しています。

 土佐氏は、「年齢別に見ると、一番医療費がかかっているのが後期高齢者」「この部分の医療費を適正化していかなければならない」と強調。特に終末期医療の問題を挙げ、「後期高齢者が亡くなりそうになり、家族が一時間でも、一分でも生かしてほしいと要望して、いろいろな治療がされる。それがかさむと500万円とか1000万円の金額になってしまう」と、延命を求めることが医療費膨張の原因であり、問題だ、と決めつけました。

 そして、「家族の感情から発生した医療費」を「抑制する仕組みを検討するのが終末期医療の評価の問題である」として、後期高齢者の新たな診療報酬体系の意図が、「延命治療」の制限にあると力説しました。 「後期高齢者の場合は、高額な医療費を使っても亡くなられる事例が多い」「それを抑制する仕組み」などとして、この制度によって、七十五歳以上の終末期医療費を抑え込むことができると説明しています。

 どうせ治らない、いずれ死ぬのだからとばかり、「医療費の削減」を目的にしてお年寄りを差別するという、この制度の本質が語られた文書だと思います。

 【予防、外来、入院、終末期まで差別、差別】

 この制度では、七十五歳を越えたというだけで、病気の予防から、病院の外来、入院、終末期まで、あらゆる場面で差別がおこなわれます。

 後期高齢者医療制度では、医療費の窓口負担は、「原則=一割」「現役並み所得者=三割」で変わりません。ただし、政府は、後期高齢者とそれ以下の世代で、病院・診療所に払われる診療報酬(医療の値段)を別建てにし、格差をつけようとしています。

 ● 病気予防でいえば、健康診断は行政の義務ではなくなりました。

 ● 「保険でかかれるのはここまで」と、治療費に上限をつける「定額制」が導入されました。そのため、外来では、糖尿病や高血圧で診療所にかよっている人は、検査の回数を減らされたりして、手厚い治療がうけにくくなります。

 ● 政府は、七十五歳以上の人の病院追い出しをすすめる新しい診療報酬制度を導入しました。これにもとづいて「『退院支援計画』をつくるので、早く退院してください」とせまられます。

 ● 政府は、「終末期医療」にかかる費用を削減し、「在宅死」をふやそうという方針を出しています。「終末期」と診断されたら、本人や家族に「延命治療はひかえめに」などの「誓約書」を出すことをすすめられます。

 ● 亡くなった場合は葬祭費まで減額されます。 こうした差別医療については週刊誌も追及しています。

   「がん 脳卒中ほか 団塊(だんかい)世代はやがて 年間47万人が斬り捨てられる 後期高齢者の終末医療 『延命やめたら医師に お手当2千円』 『高齢者は1分でも早く死ね』 あまりにも酷(むご)すぎる厚労省の本音文書入手!」(『週刊ポスト』、五月九・十六日号)。

 「福田〝姥捨て〟政権が究極の〝老人いじめ〟 冷酷! 後期高齢者『余命宣言』制度の仰天中身 『延命治療』カットで『治療費のかかる老人は早く死ね』と言うのか 『年金天引き』と同時に秘かに スタートしていた」(『週刊現代』、五月十、十七日号)。

 【年金月一万五千円の人からも保険料を天引き】

 保険料も過酷です。

 ● 収入ゼロでも、「扶養家族」でこれまで支払う必要のなかった人でも、すべての人が保険料をとられます。 高知県の場合、年平均八万一千六百二円です(高知県国保・児童課の試算)。

 ● 保険料は年金から「天引き」です。 「天引き」の対象は年金が月一万五千円以上です。 つまり年金が月一万五千円の人も、介護保険料(全国平均四千九十円)とあわせると毎月一万円を「天引き」されるのです。 四月十五日から天引きが始まったのは、千三百万人の加入者のうち八百万人です。一部の自治体や、健保の扶養家族だった人など一部凍結の対象になっているお年よりの天引きは十月からです。 この保険料は、二年ごとに見直され、七十五歳医療費や人口が増えるにしたがって自動的に引き上がる仕組みです。

 日本共産党が厚生労働省のデータをもとに計算すると、後期高齢者医療制度の保険料は「団塊(だんかい)の世代」、私など終戦後のベビーブームの世代、が七十五歳になる二〇二五年度には、いまの二倍以上の年額十六万円になるといいます。私の年金の二カ月分です。

 ● これまでは、七十五歳以上の人は、障害者や被爆者などと同じく、“保険料を滞納しても、保険証を取り上げてはならない”とされてきました。 しかし、この制度では、年金が月一万五千円に満たないため「天引き」できない人が保険料を滞納すれば保険証を取り上げられて、短期保険証・資格証明書を発行されることになりました。窓口で医療費全額を払わなければならなくなります。

 年金は二カ月分が一度に支給されます。この制度の保険料も、この日に年金から二カ月分一緒に天引きされます。これから引き続く、二カ月に一度の年金支給日は後期高齢者たちが、この制度をつくった自民党、公明党への憤りをつのらせる日となることでしょう。

 【後期高齢者医療制度の略史】

 この差別的な高齢者医療保険制度は、財界と政府・与党の合作です。

 高齢者を年齢で切り離す医療保険制度の原案が作られたのは、一九九七年、橋本龍太郎内閣(自民党、社民党、さきがけ政権)の時です。 小泉純一郎厚相の下で、同省が公表した「21世紀の医療保険制度」(同年八月)のなかに次のように明記しました。

  「高齢者の医療については、心身の特性等を踏まえ…別建ての制度とする」「全ての高齢者について保険料を徴収する」―。

 小泉氏は一九〇一年四月に首相に就任します。

 小泉内閣の時の二〇〇一年秋、経済財政諮問会議で厚労省が高齢者狙い撃ちの医療費抑制策を打ち出しました。

 これに対し、日本経団連会長の奥田碩トヨタ自動車会長(当時)が「新しい高齢者医療制度の創設を含めて抜本改革が必要だ。早急に改革案を提示願いたい」と迫りました。

 それに応え、公明党の坂口力厚労相が「後期高齢者に着目した保険制度の創設」の試案をまとめました。

 二〇〇六年二月十日、小泉内閣は、後期高齢者医療制度を盛り込んだ医療改悪法案を国会に提出しました。

 この法案に明確に反対したのは日本共産党です。

 たとえば、六月八日の参議院厚生労働委員会では、小池晃議員が、「七十五歳以上のお年寄りを集めて、そこではできるだけ医療費を抑制する仕組みという全体像だ。まるで『うば捨て山』のようになるという批判が出るのは当然だ」と追及しています。

 論戦で制度の欠陥ぶりがぼろぼろ出てきました。 しかし、六月十三日の参議院厚生労働委員会で、自民党、公明党は「審議を尽くした」と採決を強行しました。

 この医療改悪法案には、日本共産党のほかに、民主党、社民党も反対しました。

 しかし、採決した同じ委員会で、民主党、社民党は「心身の特性等にふさわしい診療報酬とする」という差別医療導入につながる内容を盛り込んだ付帯決議には賛成しました。

 自民党、公明党は参院でも強行採決を繰り返し、小泉内閣が提案した後期高齢者医療制度を含む医療改悪法は六月十四日に成立しました。

 公明党は、この法案について「『国民皆保険』の信頼守る」「公明党の主張を随所に反映」(「公明新聞」二〇〇六年六月十五日付)としました。

 【自民党の中からのとまどいと批判】

 この問題への国民の批判の中、自民党の中でも揺れが出ています。

  「産経新聞」の四月十七日付の「塩爺の よく聞いてください 元財務相 塩川正十郎」というコラムに「『後期』とは社会の『別枠』か」という記事が載りました。

 書き手は、自民党の衆院議員だった「しおじい」こと塩川正十郎さんです。

 大阪府東大阪市に住む「しおじい」の所にも、この制度の通知がきました。 「しおじい」は、その通知を見て、こう思ったといいます。

  「私は昭和21年の復員後から60余年、86歳の今日まで無我夢中で働き、懸命に人生を歩んできたつもりだ。しかし、その紙きれは私の人生を否定するものでしかなかった。

 世間や社会の『別枠』『邪魔者』になってしまったのか…。例えようのない寂しさ、悲しさに襲われた」 また、「しおじい」は、大阪から東京に向かう新幹線の中で見知らぬ高齢者から「わしらはもう死ねということですか」と涙目で訴えらかけられたそうです。

 「国が間違っとる」と、返すのがやっとだったといいます。

 「しおじい」は、「今回の後期高齢者医療制度は財政上の都合ばかり優先され、人間味が欠けている」と、いっています。

 まさに、そのとおりです。

 七十八歳の堀内光雄衆議院議員(自民党)は、月刊誌『文藝春秋』六月号に「『後期高齢者』は死ねというのか 七十八歳の私も保険証を返却した。ただちに凍結せよ」と題する手記を寄せています。

 堀内さんは、この制度によって「私が約五十年にわたって経営に携わってきた富士急行の健康保険から放り出されてしま」ったということです。

 「長年にわたって保険料を支払い続けてきた場所から、本人の意志も確かめずに一片の通知で保険証を無効にする、そんな強権が国にはあるのだろうか。不快感と寂しさを抱いた……」と、いいます。

 「四月から施行された『後期高齢者医療制度』。この制度の内容を見ると、私を含めた七十五歳以上の人たちはもはや用済みとばかりに、国が率先して“姥(うば)捨て山”を作ったかのような印象を受ける」

 本当に、そうですねー。 「日本は世界一の長寿国である。国民が安心して老後を過ごせる制度を作るのが、官僚、政治家の仕事だ。長年にわたり、日本の発展に貢献してきた高齢者たちに、寂しさや悲しさを感じさせるような国に未来はない。政治とは、たとえ大きな功は成さなくても、日々地道に努力している多くの人たちに光を当て、その汗に報いるべきものなのである」

 【後期高齢者医療制度を、どうすればいいか】

 後期高齢者医療制度を、どうすればいいか。 やっぱり、これは廃止すべきだと思います。

 いま、日本共産党、民主党、社民党、国民新党の野党四党は、後期高齢者医療制度を廃止する法案を、衆議院、参議院に提出しています。

 四野党の法案は、後期高齢者医療制度の導入そのものを撤回させる内容。同じく四月から実施された七十―七十四歳の病院窓口負担の二割への引き上げ(現行一割)や、六十五―七十四歳の国保料(税)を年金から天引きする改悪についても、中止するとしています。 私は、この法案に大賛成です。

 「でも、財源は、どうするんだい」というむきもあります。

 財源は、不当な支出を削ってまわせばいいのです。 たとえば在日アメリカ軍にたいする支出です。

 日本には百三十のアメリカ基地があります。日本を拠点にして海外に侵略していく部隊です。アメリカ兵の数は四万八千八百四十四人です。

 日本政府は、在日アメリカ軍への「思いやり予算」特別協定(在日米軍駐留経費負担特別協定)にもとづいてアメリカに「思いやり予算」をふんだんに出しています。

 地位協定第二四条は、在日アメリカ軍の維持経費について「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と規定しています。「思いやり予算」特別協定は、この原則に反するものだからです。

 政府は一九七八年、「思いやり」と称して、アメリカ軍駐留経費の一部負担をはじめました。

 一九八七年には、地位協定の解釈からも説明のつかない負担受け入れのために、特別協定を締結しました。

  「思いやり予算」を開始した一九七八年度の負担額は、基地で働く日本人従業員の福利費などに限られ、金額も六十二億円でした。 それがいまや、戦闘と直接結びつく施設であろうと米軍人の遊興費であろうと、アメリカ軍人の給与以外は何でも血税で負担するまでになっています。

 豪華な司令官用住宅、ゴルフ場の建設、アメリカ兵のための施設のバーテンダーや宴会係の経費、ゴルフ練習場係の経費、アメリカ兵のディズニーランド旅行などのレジャーのさいの観光バスの有料道路料金まで負担しています。

 二〇〇八年度の負担額は、特別協定分を含め二千八十三億円にのぼります。

 私が、いま一番いいたいこと。それは「めっそう、年寄りをやしべるな」ということです。政治には、国民へのあたたかい「まなざし」が必要だと思っています。国民の暮らしや人生にあたたかい手をさしのべるためにこそ政治はあるのだと思います。

 四月二十五日のテレビの「太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。」で、タレントの、えなりかずきさんが、「お年寄りの医療保険料と介護保険料は0円にします」法案を提案していました。こうした方向こそが、政治の本道だと思います。

 現に日本でも国の制度として七十歳以上のかたの医療費は無料だった時代があります。一九七三年元日から八三年一月三十一日までの十年間です。

 一九六八年十二月、東京都に革新知事が誕生し、七十歳以上の医療無料化を実施したことを契機に、全国の地方自治体にこの制度が広がり、ついには国の制度になったものです。

 自民党の後藤田正純衆議院議員も「本当は高齢者や障害者などの弱者は負担ゼロが一番いい」と発言しています(五月六日、TBSテレビ系の「みのもんたの朝ズバッ!」で)。

 いまこそ、日本の政治は、こうした、お年寄りを大事にする政治の方向に踏み出すべきではないでしょうか。                              

(終わり)

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