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2008.07.04

石川啄木の短歌の表現形式での試み。第二稿。

 二〇〇八年七月四日(八日に改善)。

 石川啄木の短歌の表現形式での試み

 石川啄木(一八八六年二月二十日ー一九一二年四月十三日)の短歌の表現形式を再評価していいのではないでしょうか。この原稿では、啄木の短歌の表現形式での試みについてのべます。

 【短歌のリズムを目で見せる】

 石川啄木の第一歌集は『一握の砂』(発行日・一九一〇年十二月一日)です。
 作品は、すべて三行分かち書きです。
 いくつか例をあげ、それが、どういうリズムになっているかを示します。

 東海(とうかい)の小島(こじま)の磯(いそ)の白砂(しらすな)に
 われ泣きぬれて
 蟹(かに)とたはむる

 五、七、五/七/七

 頬(ほ)につたふ
 なみだのごはず
 一握(いちあく)の砂(すな)を示しし人を忘れず

 五/七/五、七、七

 大海(だいかい)にむかひて一人(ひとり)
 七八日(ななやうか)
 泣きなむとすと家(いえ)を出(い)でにき

 五、七/五/七、七

 いたく錆(さ)びしピストル出(い)でぬ
 砂山(すなやま)の
 砂を指もて掘りてありしに

 五、七/五/七、七

 ひと夜(よ)さに嵐来(あらしきた)りて築(きづ)きたる
 この砂山は
 何(なに)の墓(はか)ぞも

 五、七、五/七/七

 しつとりと
 なみだを吸へる砂の玉
 なみだは重きものにしあるかな

 五/七、五/七、七

 ひと塊(くれ)の土に涎(よだれ)し
 泣く母の肖顔(にがほ)つくりぬ
 かなしくもあるか

 五、七/五、七/七

 いと暗き
 穴(あな)に心を吸はれゆくごとく思ひて
 つかれて眠る

 五/七、五、七/七

 【書き出しを一字分空白にする表現】

 啄木は、一九一二年四月十三日、二十七歳で亡くなります。
 その死から間もない六月二十日発行された第二歌集『悲しき玩具』の作品の表現は、第一歌集より多様になっています。
 作品は、前作と同じくすべて三行分かち書きです。
 この歌集では、何行目かの書き出しを一字分空白にするという作品も登場しています。
 以下、三行目の書き出しを一字分空白にした作品の例。

 呼吸(いき)すれば、
 胸の中(うち)にて鳴る音(おと)あり。
  凩(こがらし)よりもさびしきその音!

 以下、二行目、三行目の書き出しを一字分空白にした作品の例。

 ぢつとして寝ていらつしやいと
  子供にでもいふがごとくに
  医者のいふ日かな。

 以下、二行目の書き出しを一字分空白にした作品の例。

 人間のその最大のかなしみが
  これかと
 ふつと目をばつぶれる。

 以下、一行目の書き出しを一字分空白にした作品の例。

  廻診(くわいしん)の医者の遅さよ!
 痛みある胸に手をおきて
 かたく眼(め)をとづ。

 【カギカッコや句読点なども自由に……】

 また、石川啄木は、カギカッコや句読点などを短歌にとりこんでいます。
 『一握の砂』には、せりふにカギカッコを使った作品があります。

 「さばかりの事に死ぬるや」
 「さばかりの事に生くるや」
 止(よ)せ止(よ)せ問答(もんだふ)

 これまでに引用してきた作品でも一部わかりますが、『悲しき玩具』には、「、」「。」「!」「ーー」「()」「「」」が使われています。
 いくつか例をあげます。

 家(いえ)を出て五町ばかりは
 用のある人のごとくに
 歩いてみたれどーー

 かなしきは、
 (われもしかりき)
 叱(しか)れども、打てども泣かぬ児(こ)の心なる。

 「労働者」「革命」などといふ言葉を
  聞きおぼえたる
  五歳の子かな。

 【啄木が切り開いたものを発展させていきたい】

 短歌の魅力の一つは、音読したときのリズム性にありますが、啄木の試みは、短歌を活字で読む際、目でもリズムを感じてもらえるようにしようということではなかったでしょうか。
 いま、一部の短歌雑誌には自由律ということで、啄木のような表現形式の作品の欄があります。
 しかし、全体としては、「一行書き、できるだけ一字空けはしない、カギカッコ、句読点などは使わない」という表現が主流になっています。
 私は、啄木が切り開いた短歌の表現形式を発展させていきたいと思っています。

 注・啄木の作品は『啄木歌集全歌評釈』(岩城之徳。筑摩書房。一九八五年三月二十五日発行)によりました。

 (以上)

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