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2009.10.23

『グリーン・ニューディール 環境投資は世界経済を救えるか』。面白いですよ。

『グリーン・ニューディール 環境投資は世界経済を救えるか』(寺島実郎、飯田哲也、NHK取材班。NHK出版。2009年6月10日)を読んでいます。

 現場の取材にもとづく本で面白いですよ。

 その一部をリポートの形で紹介します。

リポート『グリーン・ニューディール 環境投資は世界経済を救えるか』第6章、第7章

 ☆ はじめに グリーン・ニューディール、京都議定書

 本論に入る前に、あらためて、この言葉の持つ意味をおさえておきたいと思います。

 まず、グリーン・ニューディールです。

 

 ● フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から

 『グリーン・ニューディール』(A Green New Deal)は、2008721日にグリーン・ニューディール・グループが発表し、新経済財団(NEFNew Economics Foundation)により出版されている報告書、もしくはその内容に沿った政策の名称である。地球温暖化、世界金融危機、石油資源枯渇に対する一連の政策提言の概要が記されている。報告書は、金融と租税の再構築、および再生可能エネルギー資源に対する積極的な財政出動を提言している。正式名称は『グリーン・ニューディール:信用危機・気候変動・原油価格高騰の3大危機を解決するための政策集』(A Green New Deal: Joined-up policies to solve the triple crunch of the credit crisis, climate change and high oil prices)。 2008年後半からの世界金融危機などへの対応のため、世界各国でこれに沿った政策が検討もしくは推進されている。

 主な提言

 省エネルギー技術とすべてのビルを発電所に変えるマイクロジェネレーション(マイクロ発電)技術への政府主導の投資 

 低炭素社会基盤構築を可能にする数千人規模のグリーンジョブの創出 

 石油・ガス業界の利益に対してたなぼた利益税(Windfall profits tax、ノルウェーで導入済)の導入による再生可能エネルギーと省エネルギーに対する財政出動の原資確保 

 環境投資と省エネルギーのための金融面でのインセンティブの創出 

 イングランド銀行の金利低減を含む、環境投資をサポートするための英国金融システムの変更 

 巨大な金融機関である「メガバンク」のより小さなユニットへの分割とグリーンバンキング化 

 国際金融システムの再構築:金融セクターが経済すべてを支配しないことを保障(資本管理の再導入を含む) 

 デリバティブのような新しい金融商品に関する公的監査の強化 

 財務報告書の提出要請と租税回避地の取り締まりによる法人税脱税の防止 

 著者

 グリーン・ニューディール の著者を以下に示す。

 ラリー・エリオット(Larry Elliott - ガーディアン紙の経済担当編集者(Economics Editor 

 コリン・ハインズ(Colin Hines - ファイナンス・フォー・ザ・フューチャーの共同理事(Co-Director 

トニー・ジュニパー(Tony Juniper - フレンズ・オブ・アースの前理事(former Director 

 ジェレミー・ガット(Jeremy Leggett - ソーラー・センチュリーとソーラーエイドの設立者兼代表 

 キャロライン・ルーカス(Caroline Lucas - イングランドとウェールズ緑の党 MEP(欧州議会議員) 

 リチャード・マーフィー(Richard Murphy - タックス・リサーチLLPの将来の経済担当共同理事・理事(Co-Director of Finance for the Future and Director 

 アン・ペティフォー(Ann Pettifor - ジュビリー2000借金帳消し運動の前代表、オペレーション・ノアの運動理事(Campaign Director 

 チャールズ・セクレット(Charles Secrett- "持続可能な開発"のアドバイザー、フレンズ・オブ・アースの前理事(former Director 

 アンドリュー・シムズ(Andrew Simms - 新経済財団の政策担当理事(Policy Director 

 タイトル・フレーズの由来と借用 

 報告書のタイトルは、フランクリン・ルーズベルト米大統領がウォール街大暴落とその後の世界恐慌を克服するため行った社会・経済政策であるニューディールに由来している。だが「グリーン・ニューディール」というフレーズは、グリーン・ニューディール・グループが造り出したものではない。この用語をより早く使ったのはトーマス・フリードマンとエルザ・ヴェンツェルである。

 『グリーン・ニューディール』の発行以来、そのフレーズは幅広く使われるようになった。

 トーマス・フリードマントーマス・フリードマン(Thomas L. Friedman; 1953720 - )は アメリカのジャーナリスト、コラムニスト。現在は、国際関係、外交政策をメインとして、定期的に『ニューヨーク・タイムズ』紙への寄稿を続けている。

 Thomas L. Friedman (April 15, 2007) "The Power of Green" The New York Times (記事はインターネット上にあります)

 Thomas L. Friedman (January 19, 2007) "A Warning From The Garden" The New York Times" (記事はインターネット上にあります) 

 Elsa Wenzel (November 19, 2007) "Green jobs will clean up the economy, communities" cnet news (記事はインターネット上にあります)

 ● Yahoo! 辞書

 アメリカ大統領バラク・オバマが当選直後の200811月に打ち出した、100年に一度ともいわれる経済危機から脱出するための経済政策。1930年代に当時の大統領フランクリン・ルーズベルトが公共投資によるニューディール政策で大恐慌を乗り切ったのと同じように、環境への投資で危機を打開したいという期待が込められている。オバマが打ち出したのは道路やダムなどを造る従来型の公共事業ではなく、脱温暖化ビジネスを広げていくことで環境と経済の両方の危機を同時に克服していこうというものである。脱温暖化投資は、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの拡大、食用でない植物によるバイオ燃料の開発、家庭の電気コンセントから充電することのできるプラグイン・ハイブリッド車の普及といったもので、エネルギー分野だけで10年間に1500億ドル(約15兆円)の国費を投入してグリーン内需を拡大し、500万人の雇用を生み出すというものである。これまでの8年間のブッシュ政権が、温暖化防止のためのさまざまな取り組みが「経済成長を妨げる」と反対していたのに対する、完全な方向転換である。 

 [新語探検 著者:亀井肇] 

 そして、この本にたびたび出てくる京都議定書です。

 これは、1997年に京都で開かれた気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)で採択されました。地球温暖化防止のための初めての法的拘束力ある国際的取り決めで、先進国に二酸化炭素などの温室効果ガス削減を義務付けたものです。議定書の下、2008年から2012年までに先進国全体で1990年比5%、日本は6%の削減が義務付けられます。その後、最大の温室効果ガス排出国のアメリカが離脱し、発効が危ぶまれましたが、「議定書を守れ」との国際世論におされ、ロシアが2004年に批准しました。その結果、2005年2月16日に発効しました。

 ☆ 第6章 グリーン・ニューディールを支える若者たち

 ● 若者を中心とする環境保護グループ「エネルギー行動連合」の活動。

 2009年2月末、首都・ワシントンで「パワー・シフト2009」を主催。就任1か月のオバマ大統領のグリーン・ニューディール政策をサポートし、気候変動にかんする法律の制定を議会に求めることが目的。コンベンションセンターら12000人。全米50州、日本をふくむ世界各地から。ステージには環境活動家、オバマ政権の幹部も登場。連邦議会の下院では若者たちから環境にかんする証言を聞く機会が設けられました。

 2004年に結成。50の環境保護団体や社会正義を推進する団体からなる連合体。代表は、ジェシー・トルカンさん(27)。事務所はワシントン市。主に全米の大学で自然エネルギーへの投資を訴える活動を進めてきました。2008年11月4日の大統領選挙でキャンペーン。グリーン・ジョブの創出を目標に掲げています。

 ここに出てくる「それではコペンハーゲンまで聞こえませんよ!」というのは、今年12月、デンマークのコペンハーゲンで開催されるポスト京都議定書を決める国連の気候変動枠組み条約第15会締約国会議(COP15)のことだと思います。

 Q どんな内容の気候変動にかんする法律の制定を求めているのでしょうか。

 Q なぜ、ヘルメット着用が必要なのか。

 ☆ 第7章 環境技術で〝勝ちにくる〟アメリカ

 ● 環境技術分野でアメリカは出遅れていました

 環境技術分野でアメリカは出遅れていました。これはオバマ大統領も指摘していることです。

 テキストで引用されているのは2009年2月27日のオバマ大統領の議会での演説です。

 「クリーンで再生可能なエネルギーを活用する国が21世紀をリードします」

 「エネルギー効率の良い経済にするため中国は史上最大の取り組みを表明しました」

 「ソーラー技術を発明したのは我々だが製品化では、ドイツや日本に負けています」

 「ハイブリッドカーをうごかしているのは韓国製のバッテリーだ」

 「アメリカ以外で雇用と産業が創出されるのは受け入れられません」(!! 何ということを)

 「今こそアメリカが先頭に立つ時です」

 「この国の再生可能なエネルギーの供給量を今後3年で2倍にします」

 「経済を変革し安全を保証し気候変動から地球を救うためにはクリーンで再生可能なエネルギーで利益が上がるようにしなければなりません」

 「このため議会には市場原理を用いた二酸化炭素の規制を導入し、さらなる再生可能なエネルギーの生産につながる法案を提出するよう求めました」

 「さらに風力発電や太陽光発電の技術開発に年間150億ドルを投資します」

 「これにはバイオ燃料やクリーンな石炭、米国産の低燃費車の開発も含まれます」

 ● 環境技術で日本を追い上げようと動き始めたアメリカ

 アメリカは、すでに環境技術で日本を追い上げようと動き始めています。

 国立アルゴンヌ研究所(シカゴ)に、その動きを見ます。同研究所は、1946年、初の国立研究所として設立されました。アメリカ合衆国エネルギー省に所属。母体はフェルミ博士やマンハッタン計画の中心に研究者チーム。原子力発電所の設計など。約1000人。

 エンリコ・フェルミ(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』) 1901929日 – 19541128日。アメリカでは核分裂反応の研究に従事し、1942年、世界最初の原子炉「シカゴ・パイル1号」を完成させ、原子核分裂の連鎖反応の制御に史上初めて成功した。この原子炉は原子爆弾の材料となるプルトニウムを生産するために用いられた。アメリカ合衆国の原子爆弾開発プロジェクトであるマンハッタン計画でも中心的な役割を演じた。

 4年ほど前から自動車用のリチウムイオン電池の開発を急いでいます。ターゲットは約65キロ走れるブラグインハイブリット車のバッテリーを開発すること。

 案内人のグレン・レラー博士の発言に注目。

 「不安定な中東の石油への依存は、エネルギー安全保障の問題であり、国家の生命線です」

 この発言の背景には、イラクやイランをはじめとする不安定な中東、南米ベネズエラではチャベス大統領が石油会社を国有化、ピークオイル(アメリカの石油生産量は1971年にピークを迎え、以後、その年の生産量を達成できていません)も問題になっていることがあります。

 ケンタッキー州で、フォードや電池会社・アソシエーション社と共同で車のバッテリー専門研究開発センターを建設することも決まりました。

 コンサルト会社・マッキンゼーもグリーン・ニューディールに参入しています。 

 Q 約65キロ走れるブラグインハイブリット車のバッテリーって実用的でしょうか。

 ● ブッシュ政権からの水面下のうねり

 ブッシュ政権は温暖化対策に後ろ向きでした。

 しかし、そのブッシュ政権のもとでもアメリカでは、2年以上前から水面下の変化が起きていました。

 ・ 2007年、20社を超える巨大企業がNGOと連携して米国気候行動パートナーシップを結成。

 ・ 州や市などコミュニティレベルで京都議定書を批准する都市が相次ぎました。

 ・ EU域内排出量取引制度など排出量の国際市場にアメリカも加わり始めました。

 ・ ベンチャーキャピタルは、グリーン関連分野に焦点を合わせていました。

 ● オバマ大統領のアメリカは変われるか

 そして、オバマ大統領のアメリカは変われるかという問題です。

 第6章に「それではコペンハーゲンまで聞こえませんよ!」声が紹介されていましたが、このテキストでは、今年12月、デンマークのコペンハーゲンで開催されるポスト京都議定書を決める国連の気候変動枠組み条約第15会締約国会議(COP15)への「アメリカのかかわり方は、その試金石になる」と指摘しています。

 そして、つぎの2点をあげています。

 ・ 2020年までの温室効果ガス削減の中期目標をどのように打ち出してくるのか。

 ・ 世界最大のCO2の排出国として長年君臨してきた責任をどう総括し、途上国ときちんと話し合うリーダーシップを発揮できるのか。

 ここで著者は大事な指摘をしています。

 「アメリカのグリーン・ニューディールは、ともすれば100年に1度の経済危機からの脱出策として関心が高いのだが、本来、いかにして地球温暖化を食い止め、持続可能な低炭素経済に舵(かじ)を切れるかという問題こそ主要である」

 ● グリーン・ニューディールを競う世界

 テキストは、最後の項に、グリーン・ニューディールを競う世界の例を示しています。 

 そして、最後から3ページ目の所で、こう問題を投げかけています。

 「化石燃料に頼った大量生産・大量消費のアメリカ型文明が、今回の経済危機を機に、ほんとうに大きく変われるかどうか」

 これが、私が、本日、議論していただきたいことでもあります。

 アメリカも日本も、こうした大きな切り換え、変化が求められています。

 【参考 コペンハーゲンでの会議を前に】

 主張 温暖化対策交渉 期限内の合意に政治決断を

 地球温暖化対策の次期枠組みを決める国際交渉は、期限となるコペンハーゲンでの会議(COP15)まで2カ月を切りました。しかし、合意の見通しはなお開けていません。9日までバンコクで行われた国連の作業部会も本格的な交渉には入らないまま、論点整理に終始しました。政府や非政府組織(NGO)関係者の間には、残された時間が減るなかで大きな進展がないことへのいらだちが広がっています。

   先進国の野心的な削減

 コペンハーゲンまでに残る交渉機会は、今月ロンドンでの主要排出国会合と11月上旬のバルセロナでの国連会合です。COP15を主宰するデンマーク政府は新たな首脳会議開催の必要も指摘しています。各国政府にはいま大胆な政治決断が求められています。

 地球環境を維持するうえで、地表の平均気温は人間の体温にもなぞらえられます。気温上昇を、産業革命以前に比べわずか「2度以内」に抑えなければならないことが、世界のコンセンサスです。今年の主要国(G8)サミットも初めてこの基準を認めました。

 気温上昇をもたらす温室効果ガスの排出をだれが、どれだけ抑えるかが焦点です。とりわけ大量に排出し続けている先進国は、2020年までに1990年比で25~40%削減すべきだとするのが科学の要請です。温暖化による海面上昇で国土を失うことへの危機感を抱く島しょ諸国は、45%以上の大幅削減も主張しています。

 先進国が野心的な削減に合意することが交渉を成功に導く最大の要素です。鳩山由紀夫首相が25%削減を打ち出したことは交渉に弾みをつけると大きく歓迎され、各国が続くことが期待されています。しかし、バンコクでの新たな表明は、削減幅を40%に引き上げたノルウェーだけでした。

 米国のオバマ政権は温暖化対策に積極的な姿勢を示しています。しかし実質削減に踏み込んでいません。米上院に提出された2005年比20%削減の法案は、コペンハーゲン後に結論が持ち越される公算が大です。米国は京都議定書に盛り込まれたメカニズムを全面的に作り直すことも要求し、新たな障害になっています。米国は温暖化対策の責任を負うべきであり、オバマ大統領の指導力が求められています。

 日本には新たな注文もつきました。主要国の合意を25%削減の前提とすべきではないという点が一つです。欧州連合(EU)の目標は20%ですが、他の先進国が大幅削減に合意すれば30%に引き上げるとしています。日本も、合意の行方にかかわらず、自らの責任として25%を削減すべきです。

   産業界との削減協定を

 日本には25%削減の具体策を示すことも求められています。国内でどれだけ削減するか、外国から購入する削減分を含めるのか。交渉を加速し、合意の達成を促すためにも、国内削減量の速やかな提示が迫られています。

 そのためには排出量の大部分を占める産業界に実効ある規制をかけることが不可欠です。日本共産党は、政府が大口排出源である業界・企業と削減の期限と目標を明示した公的な削減協定を結び、実行を追求するよう主張しています。財界が排出規制に反対するなか、協定締結に踏み込めるかどうかが鳩山政権に問われています。

20091014()「しんぶん赤旗」)

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コメント

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

投稿: 株の投資の初心者 | 2011.11.12 19:52

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