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2009.11.05

日米半導体協定の内容と、それがもたらしたこと。

 先週の授業で「日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の半導体の貿易に関する交換公文(日米半導体協定)」のことがテーマの一つになりました。
 どんな交換公文だったでしょうか。

 半導体とは、半分導体、電気を良く通す金属などの導体と電気をほとんど通さないゴムなどの絶縁体との、中間の性質を持つシリコンなどの物質や材料のことです。
 半導体を材料に用いたトランジスタや集積回路(多数のトランジスタなどを作り込み配線接続した回路)も、半導体と呼ばれています。
 半導体は情報の記憶、数値計算や論理演算などの知的な情報処理機能を持っていて、電子機器や装置の頭脳部分として中心的役割を果たしています。

 日本の半導体業界が、大きなシェアを持っていた時代がありました。一九八〇年代半ばです。
 八五年には、アメリカGartner社(当時はアメリカDataquest社)の半導体メーカー別世界売上高ランキングで、日本電気(現在のNECエレクトロニクス)が日本勢として初めて首位に立ちました。
 八六年の同売上高ランキングには、一位に日本電気、二位に東芝、三位に日立製作所、七位に富士通、九位に松下電子工業(現在の松下電器産業 半導体社)、十位に三菱電機と上位十社に六社も日本半導体メーカーが名を連ねています。
 そして、八八年には、世界全体の半導体売上高のうち、日本半導体メーカーが49%を占めるにいたりました。

 日米半導体協定、日本製半導体の対米輸出を抑制し、日本市場で外国製半導体のシェアが拡大することをねらって結ばれた協定でした。

 日米間の半導体に関する問題は、七八年、首相の福田赳夫(たけお)氏が訪米した際にアメリカの半導体メーカーが、日本側の輸入障壁、政府補助、流通システムの問題について陳情したことに端を発しています。
 以後、日本の産業政策批判、通商法三〇一条にもとづく提訴、ダンピング提訴などが相次ぎました。
 アメリカのメーカー側の論拠は、日本半導体のアメリカ市場への進出は、アメリカのハイテク、防衛産業の基礎を脅かすという安全保障上の問題として、のちには産業への波及懸念を表面上の論拠としています。
 八六年七月、日米政府間で「日米半導体協定」が最終合意されました。
 概略は、(1)日本政府は国内ユーザーにたいして外国製半導体の活用を奨励する、(2)日本政府はアメリカへ輸出される六品目の半導体のコストと価格を監視する、(3)アメリカ商務省はダンピング調査を中断する、(4)日本政府は第三国市場に輸出される三品目のコストと価格を監視する、(5)協定期間は五年、以上の五点です。
 そして、九月二日、アメリカのワシントンでの取極めがおこなわれました。 
 八七年四月、アメリカの大統領レーガンは、日本の第三国向け輸出のダンピング、また日本市場でのアメリカ製品のシェアが拡大していないことの二点を理由に、日本の特定商品(パソコン、電動工具、カラーテレビなど)にたいし関税を100%に引き上げる措置を発動しました(同年六月に解除)。
 これに対して日本は「半導体ユーザー協議会」を設立するなど対日アクセス促進のための措置を取っりました。
 九一年八月、先の第一次協定は満期になりましたが、「新」協定(第二次)が発効しました。
 日本市場へのアクセス拡大を図るアメリカは、ヨーロッパに比べて日本市場でのシェアが低いことをあげ、シェア20%を要求しました。
 その後、この目標が達成されたため、九六年七月に協定は期限切れとなり失効しました。

 いま、日本の半導体業界は、凋落(ちょうらく)しています。アメリカGartner社が発表した二〇〇六年の売上高ランキングでは、東芝とルネサステクノロジが上位十社に顔を見せているだけです。最上位の東芝は六位にすぎません。

 【「日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の半導体の貿易に関する交換公文」は、つぎのような内容です。】

 日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の半導体の貿易に関する交換公文 

 (略称)米国との半導体貿易取極

 昭和六十一年九月二日  ワシントンで
 昭和六十一年九月二日  効力発生
 昭和六十一年十月二十日 告示
 (外務省告示第三六五号)

 (日本側書簡)

 (訳文)

 書簡をもつて啓上いたします。本使は,日本国とアメリカ合衆国との間の半導体の貿易に関して日本国政府の代表者とアメリカ合衆国政府の代表者との間で行われた最近の討議に言及するとともに,日本国政府がこの書簡に添付された取極(以下「取極」という。)の中に規定された措置を実施するという両政府間の了解を,日本国政府に代わって確認する光栄を有します。
 本使は,更に,アメリカ合衆国政府が取極の中に規定された措置を実施することを貴官がアメリカ合衆国政府に代わって確認し,この書簡及び貴官の返簡が両政府間の合意を構成するものとみなすこと並びにこの合意が貴官の返簡の日より効力を発生することを確認することを要請する光栄を有します。
 本使は,以上を申し進めるに際し,ここに重ねて貴官に向かつて敬意を表します。

 千九百八十六年九月二日にワシントンで
        日本国特命全権大使 松永信雄
        合衆国通商代表クレイトン・ヤイター殿

 日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の半導体の貿易に関する取極

 I 市場参入機会
 1 日本国政府とアメリカ合衆国政府は,市場原理とそれぞれの国の産業の競争力の状態に基づいて,半導体における自由貿易を促進することを希望する。両政府は,世界の半導体市場の将来における規模と形状,特に,それぞれの国内市場における現在及び将来の状況に関して,意見の交換を行つてきた。これらの交換は,各種市場の詳細な経済分析,それぞれの国の産業の競争力,及びこれらの市場における期待成長についての独立した非政府系の見通しに基づくものであつた。両国の半導体産業は,国内的にもまた国際的にも実質的な市場の伸びを予想しており,また,両政府は,これら製品の貿易の拡大を強く支持し勧奨する。日本国の半導体生産者及び使用者は,外国系半導体の供給と使用が実質的に伸長することを予想する。アメリカ合衆国は,合衆国産業の競争力がより反映されて,日本国市場における外国系半導体販売の実質的機会が改善されることを予想する。
 こうした認識に基づき,日本国政府は,日本国の半導体生産者及び使用者に対し,実際の販売実績と状態を改善しようと希望する外国系半導体企業の日本国における市場参入の機会が増大することを積極的に活用する必要性を認識させる。他方,アメリカ合衆国政府は,合衆国の半導体生産者に対し,日本国市場におけるすべての販売機会を積極的に追求する必要性を認識させる。
 2 両政府は,参入機会における予期される改善は,取極の期間にわたつて緩やかでかつ着実なものであるべきことに合意する。
 3(1)日本国政府は,日本国における外国系半導体の販売の拡大のために,次を通じて一層の支援を提供する。
 (a)外国系半導体生産者が日本国の市場に参入する努力を行うのに際して販売に関する支援を与える機関を創設すること。この機関は,要請により,外国系半導体製品の品質評価も行い,また,研究奨学計画,講演,展示会等を外国系企業のために組織する。
 (b)日本国の顧客との共同製品開発を含め,日本国の半導体購入者と外国系半導体生産者との間の長期的関係の促進を行うこと。
 (2)アメリカ合衆国政府もまた,可能な範囲で,右の活動に支援を与える。
 4 日本国政府とアメリカ合衆国政府は,この分野における政府出資の研究開発に起因する特許を外国企業が利用する機会が十分かつ公正に与えられるべきであるとの決意を再確認するとともに,両政府は,半導体生産能力の過度の増加を刺激する政策や計画を控えるとの強い意図を有するものである。
 II ダンピングの防止
 1 反ダンピング調査の中断
 イー・ピー・ロム及び二百五十六キロビット以上のダイナミック・ラムに関する現行の反ダンピング調査は,これらの品目に関し,相互の合意により締結されたアメリカ合衆国商務省(以下「商務省」という。)と日本国の関係企業との間の反ダンピング調査中断取決め(以下「中断取決め」という。)により中断される。
 2 監視制度(合衆国市場)
 (1)両政府は,関税と貿易に関する一般協定(以下「ガット」という。)の関係規定に従つてダンピングを防止する必要性を認識する。
 (2)ダンピングを防止するために,日本国政府は,日本国からアメリカ合衆国へ輸出される品目の原価と価格を監視する。
 (3)当初監視品目は,附属書のなかで特定される。これらの品目は,日本国の企業が相当量の生産を行い,輸出が増加している半導体であって,(i)標準汎用半導体{汎にはんとルビ}であること,又は,(ii)公正価額未満の販売のおそれの証拠があること,のいずれかの基準に該当する半導体のなかから,両政府の合意により特定されたものである。品目の一覧表は,必要に応じ見直される。右基準に該当する場合,いずれか一方の政府の要請により,新たな品目を追加することができる。両政府の合意により,監視一覧表から品目を削除することができる。
 (4)監視品目に関する企業別かつ品目別の原価及び輸出価格の資料は,日本国の半導体輸出者により,日本国通商産業省(以下「通産省」という。)の定める手続に従つて,通産省に提出される。資料報告書の形式と範囲は,両政府により相互に合意される。日本国の半導体輸出者は,アメリカ合衆国内の関係企業から,アメリカ合衆国内の最初の関係のない企業への販売価格に関する資料を通産省に提出するよう勧告される。
 (5)アメリカ合衆国政府が監視品目の輸出もしくは販売が一又はそれ以上の日本国の企業により,合衆国市場において,企業別の公正価額未満の価格で行われていると考えかつ,その考えを裏付ける情報を日本国政府に提供したときは,協議を直ちに要請することができる。協議は,両政府が延長に相互に合意しない限り,最大限十四日間の限度で開かれる。
 (6)監視又は協議に基づいて,日本国政府は,企業別の公正価額未満の価格での輸出を防止するために,日本国の法令の範囲内でとり得る適切な措置をとる。
 (7)協議に基づき,かつ,アメリカ合衆国政府の同意の下に,日本国政府は,日本国の半導体輸出者を通して,当該輸出者のアメリカ合衆国内の関係企業が,アメリカ合衆国内の最初の関係のない企業に対し,企業別の公正価額未満の価格で販売しないよう,適切な措置をとる。
 (8)アメリカ合衆国政府は,自らの発意による場合であつても,また提訴への対応による場合であつても,同政府が利用できる情報に基づき,反ダンピング調査を開始する完全な権利を保持する。自らの発意による場合には,事前の協議が行われる。
 (9)反ダンピング措置が監視品目に関し開始された場合は,日本国政府は,影響を受ける日本国の半導体輸出者に対し,質問状が提示されてから十四日以内に,II2(4)項に基づき通産省に提出された資料を商務省に提供するよう勧奨する。追加資料は,通常の反ダンピング手続に従つて提供される。
 3 監視制度(第三国市場)
 (1)両政府は,ガットの関係規定に従つてダンピングを防止する必要性を認識するとともに,それぞれの産業に対し右原則に従うよう勧奨する。
 (2)ダンピングを防止するために,日本国政府は,適当な場合に,日本国の半導体企業により日本国から輸出される品目に関し原価及び輸出価格を監視する。
 III 一般条項
 1 両政府は,現行反ダンピング調査に関し,イー・ピー・ロム及び二百五十六キロビット以上のダイナミック・ラムについて双方の満足のいく中断取決めが策定されるまで,またかかる取決めが策定されない限り,この取極の条項は実施されないことを合意する。
 2 アメリカ合衆国政府が,監視品目に関し,提訴により又は行政権限の行使により反ダンピング調査を開始する場合には,両政府は,III4項に規定されている緊急協議を開始する。
 3 両政府は,進捗状況を測定,評価し,また起こり得る問題や紛争に対処するための定期協議が,この取極の目的の達成にとつて必要であることに合意する。この目的のため,両政府は,この取極の当初の二年間においては年三回以上の頻度で,それ以降は少なくとも年二回の協議を行うことに合意する。
 4 いずれの政府も緊急協議を要請することができる。このような協議は,両政府がより遅い開始期日に相互に合意しない限り,要請がなされた日から十四日以内に行われなければならない。
 5 これらの協議において,日本国における外国系半導体の販売に関する問題が特定された場合,かかる問題は速やかに解決されねばならない。
 6 この取極の規定は,両政府により,それぞれ自国の法令に従つて,実施又は施行される。
 7 この取極のいかなる条項も,第三国の利益を損なうことを意図するものではない。
 8 両政府は,この取極がガットに基づく両政府の権利及び義務に,影響を与えるものではないことを認識する。
 9 この取極の基礎の重大な変更があつた場合,また,この取極の目的が達成されない場合には,この取極の可能な改正を含め,このような状況に対処し,これを是正するために,緊急協議が開催される。日本国企業の中断取決め違反又は同取決めの適用範囲が八十五パーセントを下回ることによる同取決めの終結は,原則として,この取極の基礎の重大な変更,又は,この取極の目的の未達を構成しない。中断取決めの終結が予想される場合,アメリカ合衆国政府は日本国政府に対し,その意図及び理由を通報する。
 10 両政府がIII9項の下での緊急協議において合意に達することができない場合,いずれか一方の政府は,他方の政府に対する六十日間の書面による通告により,この取極の規定の全部又は一部を終了させることができる。
 11 この取極のII2(2)項及びII3(2)項で規定されている監視のための資料の収集に関し,通産省は,必要な場合に商業上の秘密の資料を「秘」扱いとし,日本国の関係法令に従つてこのような資料の入手可能性を限定することを含めこのような資料を保護するための厳格な措置が講じられることが確認される。このような商業上の秘密の資料の保護に関連し問題が生ずる場合には,両政府は,問題解決のため,直ちに協議を開始する。
 12 日本国政府は,千九百八十三年二月の日米先端技術産業作業部会提言2B部4項及び7項を念頭に置きつつ,日本国政府が全部又は一部を出資する研究開発計画が,完全な内国民待遇にて,日本国に設立された外資系半導体企業に対し開放されることを確認する。日本国政府は,更に,半導体産業又は同産業の一部門の開発を求めている計画が,このような計画への参入機会の観点から,このような外資系半導体企業を日本国資本系企業と同等に扱うよう作成されることを確認する。内国民待遇は,また,投資促進計画,譲許貸付及びこれに関連した援助計画への参入においても与えられる。
 日本国に設立された合衆国資本系半導体会社が内国民待遇を与えられていないと考える場合には,アメリカ合衆国政府は日本国政府に対し直ちに協議を要請することが日本国政府によつて了解される。このような協議は,要請のあつた日から十四日以内に開催される。
 13 この取極の期間は五年間とし,千九百九十一年七月三十一日に終了する。

 附属書

 (1)メモリー・デバイス
    モス・スタティック・ラム
    イー・シー・エル・ラム
 (2)マイクロプロセッサー
    八ビット構成
    一六ビット構成
 (3)マイクロコントローラー
    八ビット構成
 (4)エイシックス
    ゲート・アレイ
    スタンダード・セル
 (5)イーシー・エル・ロジック
   ◇
 (米国側書簡)

 (訳文)

 書簡をもつて啓上いたします。本官は,アメリカ合衆国と日本国との間の半導体の貿易に関する取極(以下「取極」という。)を添付した本日付けの貴使の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
 (日本側書簡を引き写した部分は省略)
 本官は,更に,アメリカ合衆国に代わつて,アメリカ合衆国が取極の中に規定された措置を実施することを確認するとともに,貴使の書簡及びこの返簡が両政府間の合意を構成するものとみなすこと並びにこの合意がこの返簡の日より効力を発生することに同意する光栄を有します。
 本官は,以上を申し進めるに際し,ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

 千九百八十六年九月二日にワシントンで
       合衆国通商代表 クレイトン・ヤイター

 アメリカ合衆国駐在
       日本国特命全権大使 松永信雄閣下

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