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2010.01.28

環境の国際的保護の必要性  オゾン層破壊問題を例に。

 環境問題の特徴は、国境に関係なく世界に拡大する可能性が高いことです。だからこそ、環境問題を地球的規模でとらえ、その解決のために対処する必要があります。

 そのことを国際的に宣言したのが、1972年6月の環境問題についての世界で初めての大規模な政府間会合、国際連合人間環境会議(スウェーデンのストックホルムで開催。113か国が参加)の「人間環境宣言」でした。

 「宣言」は、環境問題を国際社会全体の問題としてとらえ、環境損害を国際社会全体にたいする法益侵害とみなしています。

 「各国は、国連憲章および国際法の原則に従い、自国の資源をその環境政策に基づいて開発する主権を有する。各国はまた、自国の管轄権内または支配下の活動が他国の環境または国家の管轄権の範囲を越えた地域の環境に損害を与えないことを確保する責任を負う。」(原則21)

 「環境の保護と改善に関する国際問題は、国の大小を問わず、平等の立場で、協調的な精神により扱わなければならない。多国間取り決め、2国間取り決めその他の適当な方法による協力は、すべての国の主権と利益に十分な考慮を払いながら、すべての分野における活動から生ずる環境に対する悪影響を効果的に規制し、予防し、軽減し、除去するため不可欠である。」(原則24)

 ここでは、オゾン層破壊問題を例に、環境の国際的保護と、その問題点について考えます。

 【オゾン層の破壊と、その原因】

 これまで私たちが持ってきた地球大気は、そこで生存する生命体について、大変都合のいい環境でした。まず、大気の外側・成層圏(せいそうけん)にオゾンという物質の層があって、これが地球に降り注いでくる紫外線をほとんど吸収してくれます。紫外線は、私たちの体にあたると、体をつくっている分子のつながりを壊します。それを、オゾン層が吸収してくれているから、人間は生存を続けていくことができます。

 大気中のオゾンが減少すると、地表へ降り注ぐ有害な紫外線の量が増加します。皮膚ガンや白内障などの健康被害を発生させるだけでなく、動植物などの生態系への影響が懸念されています。

 地球全体をとりまくオゾン量は1980年代から90年代にかけて大きく減少し、現在も少ない状態が続いています。

 気象庁が札幌、つくば(茨城県)、那覇の3地点でおこなっている観測によると、90年以降、紫外線が増加する傾向が続いています。

 80年代に南極上空のオゾンホールが確認されました。上空の大気中(オゾン層)に含まれるオゾンの量が極端に減少し、オゾン層に穴があいたようになる現象です。南極上空にオゾンホールが出現するのは、8月から12月にかけてで、最も大きくなるのは9月ごろです。

 南極のオゾンホールは、1980年代から90年代半ばにかけて急激に拡大しました。90年代末以降、増大のしかたはゆるやかになっていますが、長期的には過去最大レベルの状況が続いています。

 オゾン層が人工化学物質のフロンガスで破壊される可能性が科学者によって初めて指摘されたのは1974年です。

 フロンを開発したのは、アメリカの冷蔵庫メーカー・フリッジデール社の親会社であったゼネラルモーターズ社です。1928年、フロン12の開発に成功し特許を取得ました。30年から ゼネラルモーターズ社はデュポンと共同でキネティック・ケミカル・カンパニー を設立し、「フレオン」という商標で生産を開始しました。フロンは化学的、熱的に極めて安定であるため、開発当時は「夢の化学物質」としてもてはやされ、世界中で使われるようになっていました。

 【オゾン層保護のための条約、議定書の締結】

 オゾン層破壊問題に対処する条約を結ぶとき、その手がかりになったのは1972年6月の「人間環境宣言」でした。

 1985年3月に、「宣言」の精神で「オゾン層の保護のためのウィーン条約」が締結されました。これは、オゾン層を変化させる活動などを規制するものでした。

 「第2条 一般的義務1 締約国は、この条約及び自国が締約国であり、かつ、効力が生じている議定書に基づき、オゾン層を変化させ又は変化させるおそれのある人の活動の結果として生じ又は生ずるおそれのある悪影響から人の健康及び環境を保護するために適当な措置をとる。」

 2年半後の1987年9月には、「ウィーン条約」にもとづいて具体的なフロン削減目標を定めた「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」が成立しました。「議定書」は、オゾン層の破壊を未然に防止する観点からも対策が必要であること、その対策は科学的知識にもとづくべきであること、開発途上国に配慮すべきであることなどを確認、規制物質をフロン5種類とハロン3種類としました。規制については、1986年を基準年として各国の生産量と消費量の双方を凍結、2.2%削減、3.5%削減と段階的に減らし、2000年までにフロン生産量、消費量をそれぞれ半減するとしました。

 その後、オゾン層破壊が予想外の速さで進んでいることが明らかになって、規制スケジュールの前倒しや規制対象物質の追加がおこなわれてきました。

 1990年6月、第2回締約国会議の場で2000年までの半減を2000年までの全廃に前倒しすることが決定しました。

 1992年11月の第4回締約国会議では、(1)すべてのフロン生産を1995年末までに全廃する(2)フロン代替物質のハイドロクロロフロロカーボン(HCFC)の生産を2019年末までに実質廃止し、2029年までに全廃する(3)フロン、ハイドロクロロフロロカーボンの回収・再利用を促進する

4)消火剤のハロンの全廃時期も従来の2000年から1994年に前倒しする(5)土壌の消毒や作物のくん蒸に広く使われている臭化メチルは1995年までに生産・消費を凍結することを決めました。

 日本では1988年3月、ウィーン条約とモントリオール議定書の国内実施法として「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法」(略称、オゾン層保護法)が制定されました。

  「その結果、特定フロンなどは先進国では1996年には全廃され、発展途上国でも2010年での全廃のスケジュールが確定していて、先進国に対し途上国への経済的、技術的協力が求められている。」(「ロジスティクス環境会議」のホームページ)

 【人工化学物質の生産・使用を世界レベルで規制】

 オゾン層の問題は、危機一髪のところで、大災害をまぬがれていますが、結果を考えない人間の経済活動が、地球大気を危機におとしいれることの、最初の大きな経験でした。

 また、フロン規制は、地球環境を守るために人工化学物質の生産・使用を世界レベルで規制する初めての例となりました。

 その成果は徐々に現れているといえますが、一度破壊された地球環境を元にもどすことがいかに困難であるかも示しています。

 「議定書」の第5条には、経済発展には大量のフロンは欠かせないとの理由から開発途上国でのフロン生産禁止措置を10年間遅らせるという規程がありました。このことは、禍根を残しました。

 また、この間の動きとしては、日本企業は、フロンガスによるオゾン層破壊が指摘された1974年からモントリオール議定書が成立する前年の86年までの間に生産を3倍化させた「実績」があります。

 企業の自主性にまかせるやり方では、地球環境を守ることが難しいことを示しています。

 【そして、いま地球温暖化】

 そして、いま、地球環境問題で世界がとりくんでいるのは、地球温暖化問題です。

 これは、地球の大気中の二酸化炭素が増えていることからおこっているといわれます。

 いまの地球大気は生命体と地球が31億年の年月をかけてつくりあげた「生命維持装置」です。この大気の構成は、地上での生物の進化が進み、四百万年前に人類が生まれても、16世紀、17世紀ごろまでは、ほとんど変化することがありませんでした。

 ところが、資本主義が生まれ、18世紀に産業革命がおこってから異変が始まりました。人間社会が消費するエネルギーが急増して、大量の二酸化炭素を大気中に排出するようになり、大気に異変がおこりはじめました。

 18世紀半ばの産業革命のころは、人間が使うエネルギーは石油換算で300万トンほどでした。19世紀には1億トン、20世紀の第二次世界大戦が終わったころには13億トン、いまでは、110億トンないし120、30億トンぐらいになっています。これに応じて、人間社会が吐き出す二酸化炭素の量は増え続けています。

 その結果、数10万年から100万年のあいだ、0.03%以下の水準で動かなかった大気中の二酸化炭素の濃度が、21世紀を迎えて0.04%の水準に急速に近づきだしました。

 その影響は、すでに予想をこえた気象変動となって世界各地に被害を及ぼしています。

 幸いに世界の知恵は、「気候変動に関する国際連合枠組条約」(1994年6月21日)、「気候変動に関する国際連合枠組条約京都議定書」(1997年12月11日)を生み出しました。

 これをどう活用して地球温暖化問題にあたるか。各国の誠実さが問われています。

 【参考文献】

 一、「しんぶん赤旗」の「知りたい聞きたい オゾンホール その後どうなったの?」。2008年7月9日付。

 一、『前衛 2010年1月号』、不破哲三「『マルクスは生きている』①」、日本共産党中央委員会。

 一、「ロジスティクス環境会議」のホームページ。

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