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2010.02.10

高知県 「県立大学改革にかかる永国寺キャンパス検討会 報告書(案)」についての私の意見。

 意見要旨

 一 学問の府としての理念を持った大学づくりを。
 二 経済学、法律学、歴史学を学ぶ新たな社会科学系学部を。マネージメント学は香美市の工科大学にすでにあります。定員増が客観的に必要なら香美市の大学内で充実してもらってはどうでしょう。
 三 県立高知短期大学は、県民の貴重な財産です。県立の独立した短期大学として施設、授業科目もより充実させて存続・発展を。東部、西部に分校を。
 四 「意見書」をまとめる前に「県民の意見を聞く場」を持ってください。

 意見

 県立高知短期大学社会科学科の二年生です。
 「県立大学改革にかかる永国寺キャンパス検討会 報告書(案)」について意見をのべます。

 一 県立大学の基本理念

 「はじめに」で県の意向として、永国寺キャンパスは「特に県内産業の振興に貢献する経営能力の高い人材育成をすることとした」、香美市キャンパスは「産業振興による県勢の浮揚に寄与する人材を育成することととし」と紹介していますが、まず、そういう観点に異議があります。
 県立大学は「学問の府として、大学固有の役割とその歴史的、社会的使命を確認し、その学術活動の基本理念」(「名古屋大学学術憲章」から)を持った大学とすべきです(「名古屋大学学術憲章」は別項)。
 どういう基本理念を持った大学にするか、まず、このことを県民的に議論して、方向性を定めてから、ことを始めるべきではないでしょうか。

 二、新たな社会科学系学部に関すること

 「提言」の「新たな社会科学系学部に関すること」についてですが「経済・経営系」とすることに異議があります。
 「経営系」というのは高知工科大学のマネージメント学部を意識してのことのようですが、二〇〇八年四月に発足した同学部は「高度なマネジメント能力を持ち、プロジェクトをより効果的に推進し問題を解決していける人材を育成する」(同大学のホームページ)としています。しかし、初年度は定数割れではなかったでしょうか。「経営系」は、需要の面からも同学部にまかせておいてはいかがでしょうか。
 「社会科学系学部」の教育の場としては、県内に県立高知短期大学社会科学科があります(一九五三年四月発足。定員百二十人)。
 以下の、「理念・目的」を掲げて、それを立派に実践しています。
 「(理念)
 高知短期大学社会科学科は、高知短期大学学則第1条に定める目的を達成するため、次のような理念の下に設置される。
 社会科学科の研究、教育を通じて、地域の文化の地域社会の発展と向上に寄与し、勤労者をはじめとする多様な学生に対して、将来の地域社会を主体的に担うことができる人材を育成する。
(目的)
  高知短期大学社会科学科は、理念の下、次のような目的を達成するために研究、教育を行う。
 ・ 豊かな教養を身につけるための基礎的な学力を養成する。
 ・ 社会科学の専門的な力量を養成する。
 ・ 地域社会の発展を主体的に担うことができる人材を養成する。」
 ここでつちかった伝統を生かし、県立高知女子大学の力も借りて、経済学、法律学、歴史学を学ぶ新たな社会科学系学部をつくってはどうでしょうか。
 社会科学としての歴史学を入れたのは現在、県下に、それを全面的に学ぶことのできる学科がないからです(かつては高知大学文理学部文学科歴史学専攻がありました。県立高知短期大学では、西洋史、歴史学、地域史、政治史の科目があります)。幕末の変革、自由民権運動、アジア太平洋戦争期など、研究者が多い県なのに不思議なことです。
 今年の県立短期大学の二年生のなかでも、県下の大学に歴史学科がないために他県の大学に編入した学生がいます。

 二、社会科学系学部における社会人教育について

 「提言」の「社会科学系学部における社会人教育について」でいわれている「夜間開講や土日開講、長期履修制度、科目群履修制度の導入」は賛成です。
 私も、ぜひ受講したいと思います。

 三、高知短期大学あり方について

 「提言」の「高知短期大学あり方について」では、県立高知短期大学について廃止がらみの表現になっています。
 せっかく、県民の運動、県議会の賛同を得て発足し、成果をあげてきた高等教育の場をなくすという発想は信じられません。
 破壊からは何も生まれてきません。
 とくに、高知県の「大学の収用力」は「全国のほぼ1/2にとどまっている」(「報告書 (案)」の「3 社会科学系学部の設置について」)のです。破壊でなく、「大学の収用力」を増やすことを考えるべきです。
 廃止がらみの表現は、貴検討会での議論の推移から見てもおかしなことです。
 私は貴検討会の議論を何度か傍聴し、議事録も読ませていただいていますが、検討会の委員からは県立高知短期大学の存続をという意見は出ても、廃止などという意見は一つも出ていません。
 議論の推移とまったく違うことが「報告書 (案)」としてまとめられるということに大きな疑問と憤りを覚えます。
 県立高知短期大学は、日本に三つしかない、夜間開講の公立短期大学です(「報告書 (案)」の「4 高知短期大学のあり方について」)。
 他に、このような短期大学であるため、私の知っている範囲でも、この二年間に、四国の他の県や九州、また本州からも学生を迎えています。その多くは、インターネットや高校教師のすすめで、県立高知短期大学を知っての受験です。
 貧困な教育行政のもとで全国各地の夜間開講の公立短期大学が減っているとき、高知県政が県民の負託にもとづいて県立高知短期大学を持っているというのは県民の誇りです。
 県立高知短期大学は、小さな大学ですが、大きな役割を果たしています。
 同短期大学社会科学科学生には、いくつかの層があります。
 ○ 仕事を持ちながら、学んだことを仕事に生かしていこうとしている学生たち。
 ○ 仕事は一度ひいたが、学びなおして、地域やボランティア活動であとひとがんばりしたいという学生たち(全学生から見ると少数ですが……)。
 ○ 卒業後も、専攻科や四年生大学で引きつづき学ぼうとしている学生たち(職場を持っていたり、アルバイトをしている学生も多い)。
 このような県立高知短期大学です。今後も、独立した、県立の短期大学として存続・発展をはかるべきです。
 「報告書 (案)」は、県立高知短期大学の存在を否定するために、いくつかのデータを意図的に取り出しています(「4 高知短期大学のあり方について)。
 ○ 入学の希望者が減少している。
 たしかに、入学者は、二〇〇八年度・百三人、二〇〇九年度・百四人と、定員の百二十人からすれば、十七人、十六人足りません。
 県は橋本県政の時代から長きにわたって県立高知短期大学廃止の方向を打ち出してきました。これが受験生の不安を呼び、進学をたじろがせてきました。希望者減少の主な原因は、こうした県の態度にあります。
 これをあらため、県立高知短期大学の存続・発展の方向を示し、各高校や企業に積極的に広報すれば、希望者は急増します。
 ○ 入学者の有職率が五割程度と少ないこと。
 これは、私の実感と違います。七割くらいの学生が働いていると思います。
 在校生には、会社員、公務員、看護師、介護士、農業者、自営業者、石油関係の経営者、介護関係の経営者などがいます。仕事場から息せき切って教室に走り込んでくる学生、授業が終わってからコンビニや酒場の仕事にいく学生、土日勤務が多くサークルなどの活動に参加しにくい学生たち……、多くの学生が働いているからこその姿です。
 なお、「報告書 (案)」の「資料10」の県立高知県立短期大学の「学生の有職率」の表には注書きがあります。「データは、1、2年生共に入学手続き時点に把握した数字で計算(入学後の数字はないが、多くの学生が仕事を始める)」とあります。
 たとえば、私のケース。私は、一昨年末に退職しました。一昨年四月の入学時には仕事をしていませんでしたが、その後、午前九時から五時までの仕事をしています。
 ○ 十八歳から二十歳の入学者が半分になっていて、一方で六十歳以上が全体の一割程度まで増えてきていること。
 「報告書 (案)」には、二〇〇九年度入学者分のデータが載っていませんので、それを紹介します。
 それによると、十八歳から二十歳までは五十七人、54・8%です。
 つまり半分以上です。
 厳しい不況の中、今後も新卒の入学者は増えていくと思います。
 「六十歳以上」の学生の人数については「報告書 (案)」の「資料10」にはデータがありません。
 二〇〇九年度入学者分の六十一歳以上のデータは、七人6・7%となっています。
 それにしても、そもそも、なぜ「六十歳以上」の学生の存在を問題視するのでしょうか。
 「六十代も学問をする」というのは日本の歴史の進歩を語るさい、重要なことです。高知が、ここまで進歩したということを語っています。高齢化県・高知県を切り開く希望の一つです。
 尾崎正直知事がも、二〇〇八年四月六日、県立高知短期大学の入学式での「告辞」で、つぎのようにのべています(尾崎正直知事の「告辞」の詳細は別項)。
 「皆様方の先輩方の中には、ご夫婦や親子で、また八十歳を超えて通学されていた方もいらっしゃいますし、新たな目標をもって、卒業後、高知女子大学や高知大学などの四年制の大学へ編入された方もいらっしゃいます。
 仕事や家庭を持ちながら夜間に学ぶということは、大変なご苦労かと思いますが、皆様方は、この大学で勉強しようという決意をもって、本日、ご入学されたと思いますし、その苦労こそが本学において学ばれることの大きな価値だと思います。
 また、この春、高校を卒業されました方や様々な人生経験を積まれた方が、同じ学びやで、ともに学びあうこともまた、何ものにもかえがたいものだと思います。
 少子高齢化の進展、日進月歩の科学技術の進化に思いをはせる時、学ぶことの前に、年齢や日々の生活の壁が高くそびえ立つようであってはなりません。
 本学は、この点にかんがみた時、『学びたい気持ち』を一番大切に、時代の要請に応じた教育プログラムを、多様な方々に提供しうる優れた教育環境を有する学びやであると考えております。」
 ○ 学習ニーズが、設立当時の「働きながら学ぶ」から「四年制大学へのステップ」や「生涯学習」にも広がってきている。  
 これは、ためにする議論です。
 県政も大学も県民の必要によって変化発展していきます。
 「働きながら学ぶ」
 「生涯学習」
 「四年制大学へのステップ」
 こうした機能を持っているからこそ、県立高知短期大学はすばらしいのです。
 「生涯学習」については、「報告書 (案)」の「提言」も「社会人教育や生涯学習機能を一層充実していく必要がある。」としているではありませんか。
 県立高知県立短期大学が、そういう機能を持っていることは大学としての魅力の一つです。
 「四年制大学へのステップ」ということについて。
 県立高知県立大学の四年制大学への編入者の人数は、この間、三人、八人、八人、十人、十一人、十二人、二十一人と増え続けています。
 そして、ことしもすでに二十人が四年制大学の三年次編入試験に合格しました。
 合格者は、二十歳代が中心ですが、四十歳代、六十歳代もいます。
 通信制の四年制大学を目指している学生もいます。
 専攻科も加えると私が知っているかぎりでも、二年生の三割近くが進学します。
 県立高知県立短期大学で学び、その学んだ力を基礎に、学び続けていく。すばらしいことではないでしょうか。
 これも県立高知短期大学の魅力の一つです。
 もっともっと魅力的な県立短期大学にしていきたいと思います。
 ○ 経済学、法学の教育の内容を、「自分でテーマを見つけ、研究、調査して論文に仕上げられるようにする」ということを中心にすえていってはどうでしょうか。現在も、演習やリポートの提出などがありますが…。
 ○ 「地域史」では、いまは高知県の自由民権運動をやっていますが、これに加えて、高知の幕末史、高知県のアジア太平洋戦争史なども科目に加えてはどうでしょうか。在野の研究者など講師はたくさんいます。
 ○ 「情報処理」ですが、現在も科目がありますが、科目を増やし、ワード、インターネット・メール、パワーポイント、「お絵かき」、画像の処理、映像の編集などパソコンをつかっての基礎的な作業を総合的に身につけることができるようにしてはどうでしょうか。「情報処理」の教員や教室を増やすことが必要になります。
 ○ 重度身体障害者を、もっと受け入れることができるようにしてはどうでしょうか。現在は、全盲で車イスの青年が一人通っていますが、せめて数人は、受け入れてはどうでしょうか。現在、一階にしかない障害者用トイレを二階、三階にもつくる、重度身体障害者をサポートする教員を配置するなどが必要となります。
 ○ それと、県下の安芸市に東部分校、四万十市に西部分校を発足させてはどうでしょうか。現在も室戸市から通っている人がいます。仕事の関係で今春から四万十町に転居するので休学せざるを得ないという学生もいます。東部の人にも西部の人にも夜の短期大学で学ぶことのできる手だてを。
 私は、今春、県立高知短期大学を卒業しますが、県立高知短期大学の存続・発展を望んでいます。

 四、「意見書」をまとめる前に「県民の意見を聞く場」を
 
 県立大学改革にかかる永国寺キャンパス検討会は、「意見書(案)」をまとめる前に、この問題について「県民の意見を聞く場」を持つことにしていましたもね。
 それが、実行されていません。
 世の中には書くのは苦手だが口ではいえるという人もいます。
 「意見書」をまとめる前に、こうした人々の意見を聞く場を持つことが必要ではないでしょうか。
 これは検討会の誠実さがためされることでもあります。

 【参考資料】

 ● 名古屋大学学術憲章

 名古屋大学は、学問の府として、大学固有の役割とその歴史的、社会的使命を確認し、その学術活動の基本理念をここに定める。
 名古屋大学は、自由闊達な学風の下、人間と社会と自然に関する研究と教育を通じて、人々の幸福に貢献することを、その使命とする。とりわけ、人間性と科学の調和的発展を目指し、人文科学、社会科学、自然科学をともに視野に入れた高度な研究と教育を実践する。このために、以下の基本目標および基本方針に基づく諸施策を実施し、基幹的総合大学としての責務を持続的に果たす。
 1.研究と教育の基本目標
 (1)名古屋大学は、創造的な研究活動によって真理を探究し、世界屈指の知的成果を産み出す。
 (2)名古屋大学は、自発性を重視する教育実践によって、論理的思考力と想像力に富んだ勇気ある知識人を育てる。
 2.社会的貢献の基本目標
 (1)名古屋大学は、先端的な学術研究と、国内外で指導的役割を果たしうる人材の養成とを通じて、人類の福祉と文化の発展ならびに世界の産業に貢献する。
 (2)名古屋大学は、その立地する地域社会の特性を生かし、多面的な学術研究活動を通じて地域の発展に貢献する。
 (3)名古屋大学は、国際的な学術連携および留学生教育を進め、世界とりわけアジア諸国との交流に貢献する。
 3.研究教育体制の基本方針
 (1)名古屋大学は、人文と社会と自然の諸現象を俯瞰的立場から研究し、現代の諸課題に応え、人間性に立脚した新しい価値観や知識体系を創出するための研究体制を整備し、充実させる。
 (2)名古屋大学は、世界の知的伝統の中で培われた知的資産を正しく継承し発展させる教育体制を整備し、高度で革新的な教育活動を推進する。
 (3)名古屋大学は、活発な情報発信と人的交流、および国内外の諸機関との連携によって学術文化の国際的拠点を形成する。
 4.大学運営の基本方針
 (1)名古屋大学は、構成員の自律性と自発性に基づく探究を常に支援し、学問研究の自由を保障する。
 (2)名古屋大学は、構成員が、研究と教育に関わる理念と目標および運営原則の策定や実現に、それぞれの立場から参画することを求める。
 (3)名古屋大学は、構成員の研究活動、教育実践ならびに管理運営に関して、主体的に点検と評価を進めるとともに、他者からの批判的評価を積極的に求め、開かれた大学を目指す。

 ● 二〇〇八年四月六日、県立高知短期大学の入学式での尾崎正直知事の「告辞」から

 本日、入学式を迎えられました本科生、専攻科生の皆様方、ご入学、誠におめでとうございます。
 自信と希望に満ちた皆様方の晴れやかな表情を拝見し、その学ぶ意欲の高さを確信するとともに、これからの学生生活の幸多からんことを心よりお祈りするしだいであります。
 高知短期大学は、昭和二十八年に県内唯一の夜間の短期大学として開学して以来、「働きながら学べる大学」、「地域に根ざした大学」として、高知県の高等教育の一翼をになってまいりました。
 この間、四千九百人余りの卒業生を送り出してまいりましたが、その多くの方々が、県内のさまざまな分野で活躍されておられます。
 このような本学に皆様方をお迎えすることができましたことを、本学の設置者として大変うれしく思っております。
 皆様方の先輩方の中には、ご夫婦や親子で、また八十歳を超えて通学されていた方もいらっしゃいますし、新たな目標をもって、卒業後、高知女子大学や高知大学などの四年制の大学へ編入された方もいらっしゃいます。
 仕事や家庭を持ちながら夜間に学ぶということは、大変なご苦労かと思いますが、皆様方は、この大学で勉強しようという決意をもって、本日、ご入学されたと思いますし、その苦労こそが本学において学ばれることの大きな価値だと思います。
 また、この春、高校を卒業されました方や様々な人生経験を積まれた方が、同じ学びやで、ともに学びあうこともまた、何ものにもかえがたいものだと思います。
 少子高齢化の進展、日進月歩の科学技術の進化に思いをはせる時、学ぶことの前に、年齢や日々の生活の壁が高くそびえ立つようであってはなりません。
 本学は、この点にかんがみた時、「学びたい気持ち」を一番大切に、時代の要請に応じた教育プログラムを、多様な方々に提供しうる優れた教育環境を有する学びやであると考えております。
 本学で学ばれたことが、長い人生の中で、忘れられない学生生活になりますことを、願っています。

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