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2010.11.22

 『伊勢物語』二十三段に出てくる男性のこと。大和から高安に通うには何時間かかったのでしょうか?

 『伊勢物語』二十三段に出てくる男性の行動を点検してい見ると、この男性はどんな仕事をしていたのかなぁ、仕事にはちゃんと行けていたのかなぁと考えてしまいます。

 まずは、この段を読んでみましょう。
 私の関心事は、この男性と、幼なじみの女性が結婚した後の、この段の後半です。

 さて年ごろ経(ふ)るほどに、女、親なく、頼りなくなるままに、「もろともにいふかひなくてあらむやは」とて、河内(かふち)の国、高安(たかやす)の郡(こほり)に、行(い)き通ふ所いできにけり。さりけれど、このもとの女、あしと思へる気色もなくて、いだしやりければ、男、こと心ありてかかるにやあらむと思ひうたがひて、前栽(せんざい)の中に隠れゐて、河内(かふち)へいぬるかほにて見れば、この女、いとよう化粧(けそう)して、うちながめて、

  風吹けば沖つ白波(しらなみ)龍田(たつた)山
    夜半(よは)にや君がひとり越ゆらむ

 とよみけるを聞きて、限りなくかなしと思ひて、河内(かふち)へも行(い)かずなりにけり。まれまれかの高安(たかやす)に来て見れば、はじめこそ心にくくもつくりけれ、今はうちとけて、手づから飯匙(いひがひ)とりて、笥子(けこ)のうつはものに盛(も)りけるを見て、心憂(う)がりて行かずなりにけり。
 さりければ、かの女、大和(やまと)の方を見やりて、

  君があたり見つつををらむ生駒山(いこまやま)
    雲な隠しそ雨は降(ふ)るとも

 と言ひて見いだすに、からうじて大和人(やまとびと)、「来む」と言へり。よろこびて待つに、たびたび過ぎぬれば、

  君来むと言ひし夜(よる)ごとに過ぎぬれば
    頼まぬものの恋ひつつぞ経(ふ)る

 と言ひけれど、男住まずなりにけり。  

 男性は大和(いまの奈良県)に住んでいるようです。
 最初の妻も、すぐ近くに住んでいるようです。
 妻のもとに通っていたわけです。
 ここでの暮らしについての男性の費用は、妻の家が持つようですね。
 しかし、妻の親が亡くなり、妻は経済的に頼りなくなりました。
 そこで、男性は、妻と一緒に不自由をするのは嫌ということで、「河内(かふち)の国、高安(たかやす)の郡(こほり)に、行(い)き通ふ所」をつくって、ということで、ここなる女性のもとに通い始めます(いやーーな男ですねえ)。
 男性の家は、生駒山の奈良県側のようですね。
 生駒山というのは、奈良県生駒郡の南部と大阪府中河内郡の境をなす山です。
 河内の国高安の郡は、いまの大阪府東南部、信貴山西麓の地だといいます。
 夜、大和から龍田山を越えて、ここに通うのですから大変な道のりだったと思われます。
 最初の妻は、男性が高安の女性のもとに通うことを「あしと思へる気色もなくて、いだしやりければ……」というのですから、すごい。
 さすがに男性は、妻が「こと心ありてかかるにやあらむと思ひうたがひて、前栽(せんざい)の中に隠れゐて、河内(かふち)へいぬるかほにて見れば……」という行動をとります。
 高安に行くふりをして、彼女の家の庭に隠れて、ほかの男性が通ってきているのではないかとのぞき見しているわけです。
 そうすると妻は、しっかり化粧して、くだんの歌を朗々と読みます。
 その歌に心をうたれる夫……。
 私は、ひねくれているので(みなさんは、ごぞんじでしょうか……)、妻は、こんな態度をとれば夫は、きっとのぞき見するだろうと思って名演技をしたのだと思います。かしこい女性です。
 「なんという非文学的な読み方か!!」と、私自身も自分の性格を好きにはなれないのですが……。
 ところで、夜、大和と高安までは龍田山を歩いて越えて行くと何時間かかるのでしょうか。
 かなりの時間がかかると思います。
 この男性は、一時は、夜、通って、また、大和に帰ってきてという暮らしをしていたようですが、こんな状態で仕事はどうなっていたのでしょうか。
 無職だったのでしょうか。
 何か、そこんところが理解できません。
 高安の女性が「今はうちとけて、手づから飯匙(いひがひ)とりて、笥子(けこ)のうつはものに盛(も)りけるを見て、心憂(う)がりて……」という状態になるのですから、まったく生活感のない「上流階級」の人のようですが……。
 いつか、彼のコースで奈良から高安まで歩きながら考えてみたいと思っています。

 どなたか、私と、一緒に行ってくれませんか。

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