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2011.02.22

【小説】 「苦しみの国」か「悦楽の国」か。  お読みください。藤原義一、一押し。

 男は朝からずーっと憂うつでした。
 ベッドから起きあがることもできません。
 不意に<もう世の中、何も楽しいこともないし、生きていてもしょうがない、死んでしまおう>と、思い始めました。
 「でも、痛いのはいやだ」
 あれこれと考え始めました。
 「そうだ。酒で急性アルコール中毒で死んでしまおう」
 そう決めると急に元気が出てきました。
 風呂をわかしました。
 ゆっくりと入りました。
 「死体がきたないと、みっともないからな」
 そして、五〇CCバイクに乗って酒屋に行きました。
 泡盛。
 ラム。
 ウイスキー。
 焼酎。
 きついものだけを買い込みました。
 バイクのボックスに入れ、両方のハンドルに袋をかけて、よたよたと家に帰り着きました。
 男は、外着のままでベッドに座り込んで飲み始めました。
 飲み始めたのが午後二時。
 もう夜中の零時を過ぎています。
 何も食べないし、ピッチは速いし……、もうクデングデンです。
 十分に死ねそうです。
 そして、しばらくして、男の意識は飛んでしまいました。
 
 男は、四方八方からライトが当てられた広々とした部屋に座り込んでいました。
 男の名前が大声で呼ばれました。
 正面のドアを開けて、そこに入れというのです。
 入ると、そこはドーム形の全面ガラス張りでした。まぶしい光がふりそそぎ、目をあけていられないくらいです。
 「あなたには、苦しみの国にいってもらいます」
 どこからともなく、若い女性らしい美しい声が聞こえてきました。
 「あなたのような唯物論者は信じてもいなかったでしょうが、ここには苦しみの国と悦楽の国とがあります。ここは、あなたが、そのどちらかに行くかの裁定の部屋です。どちらに行くかは、あなたが、前の世の中でどんな生き方をしてきたかで決めました。ただし、異議は認めます」
 「何で僕が苦しみの国に……。前の世の中では、僕は、けっこう人のためにやってきたと思っているんですが……」。男は、目を見開いて叫びました。
 「何をいっているんですか。あなたの生き方は、あなたの、奥さんへの態度を見てもわかります。彼女がどんなにつらい時にも、あなたは彼女を思いのままに使役してきたのではないですか。そのため彼女は一時は四十キロほどになっていましたね」
 「でも、いまは五十五キロもあります」
 「それは、このところ、彼女があなたをみはなして、自由に生きるようになったからです。あなたの態度は、あなたが二十三歳で彼女と結婚したときから変わっていません。あなたほどひどい男は、前の世の中でもまれです」
 「僕は、そんな男ではない。女房に聞いてくれ!!」
 「あなたの奥さんからの聴き取りは済んでいます。彼女は、思いのたけを語ってくれました。あなたの悪行をしめす証言はたくさんあります。私の前にある文書の束は、いまにも崩れそうです」
 「そんな……」
 「やはり裁定は変わりません。あなたを、苦しみの国に行ってもらいます」
 
 「あなた! あなた!」
 あの裁判員が、遠くのほうから呼んでいます。
 少し違うかな? 声の質は同じですが、年寄りの声になっています。
 「どうしたの、こんなに酔っぱらって。アルコール臭い! なによ、この、お酒のびん。 もう! なんなの!」
 「ううーーーん。えっ……」
 そうか、夢だったのかな。
 いまは、夜のようです。
 「おまえか……。うーーん。ところで、いまは何日?」
 「なにいってるのよ。二十六日よ」
 酒を飲み始めたのが六十四歳の誕生日の二月二十三日だったから、ずいぶん長いこと意識が飛んでいたことになります。
 「で、お前は?」
 「いま帰ってきたとこ。旅行楽しかったわ」
 そうか、十五日からヨーロッパへ行っていたんだ。
 「風呂をわかしてくれ」
 「それぐらい自分でやりなさいよ」
 「おかずは龍馬空港で買ってきたわよ。好きに食べてね。私は、そこのインド料理の店で、みんなと食べてきたから」
 <やっぱり、あの裁定はおかしい!>

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コメント

贖罪感に満ちた、つらい夢ですね。
ひろ子さんを大事にしませう。

投稿: ひがとよ | 2011.02.25 01:00

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