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2011.12.05

総集編 短歌の花だより 梅雨

  総集編 短歌の花だより  梅雨

 

 梅雨

   ビヨウヤナギに会いました

 人生で 二(ふた)季節目の 出合いです
 ビヨウヤナギが
 上水(じょうすい)にいた

 雨の中 年金守れの 辻演説
 ビヨウヤナギも
 アンテナ立てる

 二〇〇四年五月十九日は休日。午後、玉川上水を求めて東京都世田谷区、渋谷区を歩きました。
 玉川上水は、多摩川上流の羽村から四谷大木戸まで約四十三キロメートルの水路です。
 京王線の代田橋駅近くから流れに沿って歩きます。
 すぐに流れが地下に入ります。地上は世田谷区立玉川上水緑道になっています。また、流れが出てきました。そして、地下へ。少し歩いていくと、流れがあります。そして、その先は、世田谷区立玉川上水第二緑道。
 ドクダミ、ビヨウヤナギ、タチアオイ…とさまざまな花を楽しんだ散策でした。
 五月三十日、仕事で東京都町田市金森にいきましたが、そこの都営金森第五アパート集会室の所の公園にもビヨウヤナギが咲いていました。
 二首目は、六月六日午後、東京都府中市天神町で。
 この日、東京も梅雨入り。
 ビヨウヤナギは、オトギリソウ科オトギリソウ属です。

   ウノハナのにおう池のほとり

 八方に 白を放射し りんといる
 下(しも)の池ほとり
 ウノハナの群れ

 二〇〇四年五月二十二日午後、東京都新宿区の新宿御苑の下(しも)の池の所にウノハナが咲いていることを知り、見にいきました。
 確かめてみましたが、やはり強いにおいはしませんね。
 というのは、「夏は来ぬ」(佐々木信綱作詞、小山作之助作曲)の一番に歌詞の「卯(う)の花の、匂う垣根に」の解釈の件です。

 卯(う)の花の、匂う垣根に
 時鳥(ほととぎす)、早も来鳴きて
 忍音(しのびね)もらす、夏は来ぬ

 さみだれの、そそぐ山田に
 早乙女(さおとめ)が、裳裾(もすそ)ぬらして
 玉苗(たまなえ)植うる、夏は来ぬ

 橘(たちばな)の、薫るのきばの
 窓近く、蛍飛びかい
 おこたり諌(いさ)むる、夏は来ぬ

 楝(おうち)ちる、川べの宿の
 門(かど)遠く、水鶏(くいな)声して
 夕月すずしき、夏は来ぬ

 五月(さつき)やみ、蛍飛びかい
 水鶏(くいな)鳴き、卯の花咲きて
 早苗(さなえ)植えわたす、夏は来ぬ

 「卯(う)の花の、匂う垣根に」は、やはり、ウノハナが香るのではなく、白い花が美しく映える状態をいっているのでしょう。
 「『にほふ』」は、『美しく色づく、美しく 映える』という意味で、元々、目で見て美しいことを表す言葉でした。平安時代に、においに 関する意味が加わって、現代では、視覚の意味が消えて、嗅覚(きゅうかく)の意味だけが残りました」(インターネットサイト「のぞきみ 日本語・日本文化」)
 佐々木信綱さんは、ここに古語を使ったのだと思います。
 ユキノシタ科ウツギ属の落葉低木です。和名は、ウツギ。

   タチアオイを助けた息子と母

 わが背より 高く伸びいる タチアオイ
 ピンクの花に
 涙たたえて

 群れ咲いて 美をたたえあう タチアオイ
 ほうけて見てる
 梅雨晴れの午後

 下方から 順に咲くらし タチアオイ
 残るつぼみは
 もう数個だけ

 強風で 倒れてしまった タチアオイ
 助けた人いて
 また、立っていた

 二〇〇四年五月二十二日午後、東京都小金井市のJR武蔵小金井駅で下車。南口では祭りの準備をしていました。
 本町にさしかかると駐車場の脇にタチアオイが咲いていてました。
 二首目は、その後、東京都国分寺市で出合ったタチアオイ。
 三首目は、六月十二日午後、東京都府中市栄町で出合ったタチアオイです。
 翌十三日午後、東京都国分寺市東元町四丁目の農家の庭に群れ咲いたタチアオイを見ました。
 七月一日午後、出勤前に「駐車場の脇」を見にいきました。
 六月二十六日、強い風で、ここのタチアオイが倒れたといいます。その夜中、近くに住む大学三年生の男性が、このタチアオイを救いにいくことにしました。同居している母親も、それでは私も一緒に…。
 で、七月一日午後、このタチアオイは立っていました。三メートルほどあります。下のほうに白いテープの補修の跡があります。優しい息子と母に乾杯。
 タチアオイは、アオイ科タチアオイ属です。原産地のギリシャ、クレタ島などからシルクロードを通って中国を経由し日本へ渡ってきたといわれます。
 タチアオイの花は、下段から咲き始めて咲き終るころには梅雨が明けるといわれています(見ていると下段からでないケースもありますが…)。

   コンカドールの鉢を買ったよ

 ゆったりと 泊まり勤務を 楽しんで
 「お疲れさん」と
 ユリの鉢買う

 二〇〇四年五月二十二日午後、東京都小金井市の貫井南町五丁目のバス停の近くの花屋に、すばらしいユリの鉢がありました。コンカドールです。
 「うわーーっ、すっごーい」という感じです。
 「すばらしいですね。高いでしょうね。おいくらですか」
 若い男性の店主は「千円おまけして、千五百円にさせていただきます」。
 コンカドールは、ユリ科ユリ属です。
 二首目は、二〇〇五年三月の作品です。

   「ガザミアという名だったんだ」

 一月(ひとつき)も わからなかった 花の名を
 教わっちゃったよ
 ガザミアだって

 二〇〇四年五月二十三日、日曜日。計四時間ほど東京都府中市を自転車で走りました(後半は雨具を着て、はーはーいいながら…)。
 発見、二つ。
 その一。いろんな所で、庭の手入れをする人たちに出会いました。これは、一種、ムーブメントですね。
 その二。いろんな所で、集団で外遊びする小学生らしい女の子たちに出会いました。なぜか男の子が見当たりません。
 妻に聞くと「男の子たちは、サッカーや野球のチームに入っていて、小学校にいっているのよ」。
 そんな子ばかりはないでしょうね。きっと。
 この日、植物の名前をいつくか知りました。
 カキモドキ。
 アマゾンリリー。
 ガザミア。
 「奇麗ですね。この花は、何という名前ですか」
 花の好きな人は、このひとことで仲良くなれます。

   バラたちは、赤く燃え立って

 君よ、バラ!
 アルティッシモの 名のもとに
 新宿の野に 赤く燃え立つ

 六月に 見たいバラの名
 「ピエール・ド・ロンサールなの」
 彼女の化身か

 とげのある バラに魅かれる
 心根(こころね)が
 わかりはじめて 中年となる

 二〇〇四年五月二十五日午後。泊まり番明けで東京都新宿区の新宿御苑に。ここで、この花と出合いました。
 いい形をしたものに女性カメラマンが、ずーっとカメラを向けています。
 「さすがに、いいのを見つけましたね」
 「向こうのほうにもたくさんバラがありますよ。ひっかかってしまって、半日、バラを撮っています」
 というタイミングで場所をあけてくれました。
 花好きは、いい人ばかりです。
 花の短歌集を読んでくださったかたから、いろいろ花情報が届いています。
 二〇〇四年六月二日。埼玉県の女性からスイフヨウが出てくる小説や歌についての手紙。
 翌三日。大阪府の女性から「私はこの時期、ピエール・ド・ロンサールというバラを求めてウロウロします」とのはがき。
 ピエール・ド・ロンサールは、重ねの厚い、大輪花。白で花芯にほんのりピンクがかかります。
 ピエール・ド・ロンサールは、「バラの詩人」と呼ばれた十六世紀フランス詩人の名前です。
 三首目は、二〇〇五年三月の作品です。

   モナリザを二鉢(ふたはち)買って

 モナリザの 「処分」品です 五百円
 二鉢買って
 庭隅に置く

 二〇〇四年五月二十七日午後、泊まり明けで、あちこちとまわって、ついに最寄のバス停で下車。
 その前のスーパーの花屋にユリのモナリザの「処分」品が二鉢置いてありました。一鉢五百円。
 「これ、今年は、もう咲かないんですか」
 「もう咲きませんねー。球根ですから、来年も大丈夫です」
 二鉢とも買ったら、「おまけ」にユリの球根を三つくれました。
 鉄砲百合(白)、コネチカットキング(黄)、グランドパラディソ(赤)です。
 買ってきたユリたちを庭に植え、水を打って、静かに庭を見ました。
 この庭は、T字型の狭い庭ですが、植物がいっぱい。
 キンモクセイ、クワ、アンズなどの木々を、風が、ざわざわとわたっていきます。
 ユリの花が目当てなのか白いチョウチョウが舞っています。
 すごくいい情景です。

   ササユリのサイトがあったよ

 ササユリの 開花のシーン 見せている
 サイトがあったよ
 繰り返し見る

 二〇〇四年五月二十八日、僕の花の短歌集を読んでいただいた男性から、和歌山県出身でササユリが好きなんだが…というはがきをいただきました。
 ササユリってどんな花なんだろうとインターネットを検索していたら、shopin(ショパン)さんのサイトにササユリがありました。ここにしばらく立ち寄って開花するシーンを見せてもらいました。
 ササユリは、ユリ科ユリ属。紫の少しはいった薄いピンク色の花です。葉がササの葉に似ています。日本固有のユリで、近畿、中部、中国、四国、九州の一部に自生しています。

   キンシバイだったんだ

 買ってきた 『花の名前』の 表紙です  
 「ああ、この花だ」
 名はキンシバイ

 二〇〇四年五月二十二日、僕の最近出した花の短歌集についてのある若い女性の感想を聞きました。
 「いままでは政治や社会の短歌ではスローガン的なものが多く、妻、孫を歌ったものは『好き。好き』というちょくさいなものが多かったけれど、今度の歌集は、花をテーマにしているので、花に託して政治や妻、孫をうたっていてもスローガン的、ちょくさい的でなくなっていて、よい。今度の歌集を読んで、人間は成長するものだと思った。これは、ものになるかもしれないと思った」
 僕の意図するところを深くくみ取ってくれた、うれしい批評でした。
 この日は泊まり明け。午後、散歩をしていたら東京都渋谷区千駄ヶ谷五丁目の千鳩(ちはと)児童遊園地で黄色のビヨウヤナギのような花がたくさん咲いていました。
 しかし、形が少し違います。何という花なんだろう。
 六月一日の泊まり明けの午後、東京都のJR三鷹駅を降りて、北口から玉川上水脇を三鷹市との境まで歩きました。
 その途中に同じ花に出合いました。雨露をたたえて「うつくしかー」って感じでした。
 夕方、府中市に帰り着いて 『花の名前』(浜田豊著、日東書院)を買いました。
 その本の表紙に、この花の写真が載っていました。キンシバイという名前でした。
 キンシバイは、中国中部原産で、オトギリソウ科オトギリソウ属です。

   クチナシの甘い香りにひかれて

 また合えた
 優しい姿の クチナシと
 話し合ってる 六月の午後

 クチナシの 甘い香りに ひかれてか
 アリ、群がって
 生気吸い取る

 夕闇に 八重のクチナシ 映えていて
 香りの中に
 抱かれ、夢見る

 実をつけた クチナシの木を 植え込んで
 門松として
 新年迎える

 二〇〇四年六月六月四日午後、仕事で東京都大田区の池上、東矢口にいったら、今年は初めて見る花にたくさん出合いました。
 アガパンサス。
 クチナシ。
 ヤマユリ。
 白いユリ。
 エンゼルトランペット。
 などです。
 花の季節が急速に変わりつつあるようです。
 クチナシは、アカネ科クチナシ属です。
 真っ白な花で甘い香りをはなちます。花には、一重と八重咲きがあります。
 二首目は、同六月九日午前、東京都国分寺市東元町で。
 一重(ひとえ)の白いクチナシが少し茶色になりかかっていてるものに十数匹のアリが群がっていました。
 「すごい光景を見てしまった」という感じでした。
 同年六月十七日夜、わが家近くにたどり着きました。
 近くのアパートの庭に八重のクチナシが咲いていました。
 鼻を近づけて、すーっと空気を吸い込むと「うーん。いいにおい」。
 同年十月二十六日。休み。しかし、グロッキーで午後三時までグーグーグーグー。自転車で近くの園芸農家へ。実をつけたクチナシの木を買いました。
 クワで深さ五十センチメートルほどの穴を掘って植え込んだのですが、この作業だけでもフーフーいっています。
 鍛えなければ……。

   ヤマボウシが青空に咲いて

 青空を ふと見上げれば ヤマボウシ
 白のほほ笑み
 「たまには見上げて」

 ヤマボウシ 赤い実一つ かんでみる
 口に広がる
 自然な甘さ

 二〇〇四年六月五日午前、東京都国分寺市の都営東元町一丁目アパートにさしかかり、ふと見上げたら「あっ、ヤマボウシが咲いている」。十メートルくらいの木の上のほうでした。
 これに気がつかなかったのは、このところ、うつむきかげんで歩いていたからなのでしょうか。
 実は、JR国分寺駅の丸井デパートの八階の広場にも、ヤマボウシが咲いていて写真にも撮っていました。でも、ここのヤマボウシが咲いていることには気がつきませんでした。
 ヤマボウシは、ミズキ科ヤマボウシ属の落葉高木。
 四枚の先端がとがった花弁のように見えるのは総苞です。中央部にあるつぶのような一つずつが花です。雄しべが四本突き出ていて、黄緑色の四弁の花があります。
 どうも体の調子が「いまいち」です。九月十日は、風邪で職場を休んで、一日、何にも食べずに寝ていました。いえ、夜中に少し元気になって、ナシを二つ食べました……。
 一夜明けた十一日午後、ふらふらと、いつもより二時間も早く家を出ました。出勤です。
 途中、丸井デパートの屋上の庭に寄りました。
 「あっ、ヤマボウシの実が熟れている!」
 直径二センチメートルくらいのゴルフボールのような凸凹のある赤い実です。
 こっちに一群れ、そして、あっちに一群れ。
 赤い実がたくさん下に落ちていました。
 新しそうなのを拾って口に入れると、「甘くておいしい! なんか自然な甘さだなぁ。いいなぁ」。
 元気の出る甘さです。
 さぁ、職場に向かおうか。

   テイカカズラと定家の思い

 真っ白の 五弁のプロペラ 回ってる
 テイカカズラは
 涼風の中 

 そいとげぬ 女性の墓に まつわるか
 テイカカズラは
 げに恐ろしき 

 二〇〇四年五月二十九日午後、東京都世田谷区北沢を歩いていて五弁の白い花と出合いました。花弁がスクリューのようにねじけています。しばらく写真を撮りました。しかし、この花の名前がわかりませんでした。
 六月十日午後、東京都国分寺市の「お鷹の道」を歩いていたら、また、この花に出合いました。
 その後、泊まり勤務。仕事が一段落して花の本を読んでいて、やっと名前がわかりました。テイカカズラでした。
 キョウチクトウ科テイカカズラ属です。付着根を出しながら、他の樹木や岩にはい上がって成長します。
 テイカカズラという名は謡曲(能の台本)の「定家」に出てきます。
 平安時代の終わりごろ、後白河法皇の第三皇女式子内親王は、幼くして賀茂斎院となり、十年にわたって神社に奉仕していましたが、病のために退きました。このころ、歌人の藤原定家(一一六二-一二四一年)が皇女を慕っていましたが、皇女は独身を守って四十九歳で病気のため亡くなりました。それでもなお、皇女を慕った定家は蔦葛(つたかずら)となって、皇女の墓石にまつわりつきました。
 定家、恐るべし。

   ナツツバキは切ない一日花

 ナツツバキ
 一日花か 切ないね
 この日の形 目に焼き付ける

 腐葉土を もらっちゃったよ
 ナツツバキ 咲いてくれよと
 ほどこしてやる

 二〇〇四年六月十二日午後、自転車で東京都小金井市貫井南町五丁目を「散歩」していたら白いツバキのような花に出合いました。
 その家の男性に聞くと「シャラです。ここいらは建売り住宅だから、どこの家にも咲いています」。
 家に帰って調べたらシャラノキ、ナツツバキでした。ツバキ科ナツツバキ属です。
 ナツツバキの花は直径六センチメートルほど、五枚の白い花びらにしわがあり、ふちには細かくギザギザがあります。
 ナツツバキは、一日花で一日を咲いて花の形そのままで木の下に落ちてしまうといいます。
 翌十三日午後、近所の園芸農家にいったら二メートル五十センチメートルほどのナツツバキがありました。えい、と思って買ってきました。
 七月七日午後。泊まり明けで、いつもの新宿御苑通り抜けコースでJR新宿駅へ。
 同園新宿口隣りの「東京みちの情報館」(国土交通省東京国道事務所)に立ち寄ったら、帰りに腐葉土を一袋、お土産にもらいました。
 街路樹からせん定した枝を細かく砕き、米ぬかや植物性発酵促進剤を加えて発酵させたものだといいます。
 午後六時過ぎに帰り着いて、わが家の庭にほどこしました。
 さぁ、どんな効果が出るか……。
 それはそうと眠い。
 昨夜は、夜中の携帯電話のニュースの受信が頻繁で、何回も起きたこともあり、超眠い。少し寝てから活動を再開します。
 このパターンだと、時々、そのまま朝まで寝込んでしまいますが……。

   トケイソウは暮らしの時を刻む

 プー、ピーの とうふ屋さんの くるまちで
 トケイソウ花 
 時、刻んでる

 あなたの地域には、とうふ屋さんはやってきますか。
 一度、京都市で、とうふ屋さんがやってきているまちを歩いたことがあります。
 東京都でも、夕方、JR中野駅のホームから、南口方向にある東京都住宅供給公社中野住宅(中野区中野二丁目、四階建て)を見ていて、とうふ屋さんがやってきている姿に出合ったことがあります。
 「一度、あの団地にいってみたいなぁ。きっと庭にも花がいっぱい咲いているだろうな」
 この一年ほど、そう思いつつ、きっかけがありませんでした。
 二〇〇四年六月十六日。泊まり明け。新宿で六十ミリの接写レンズを買いました。その勢いで(?)、「よーっし」と、いってみました。
 やっぱり、そこの庭には、アガパンサス、白いユリ、アジサイ、トケイソウと花がいっぱい奇麗に咲いていました。
 住んでいる人々の気持ちが伝わってくる庭でした。
 午後五時半ころ、五十ccバイクに乗った男性が団地に到着。彼が、プー、ピーのラッパを吹き鳴らすと、各棟から女性たちがやってきます。
 とうふ屋さんです。
 しっとりとした生活がある空間でした。

   キュウリの花はオレンジの五弁

 農園に オレンジ五弁が 群れ咲くよ
 キュウリ大好き
 ハチもぐりこむ
 
 東京都国分寺市東元町二丁目の市民農園に黄色の五弁花が咲いていました。二〇〇四年六月十八日午前のことです。
 作業している男性に聞くと、キュウリだそうです。
 ハチが飛んできて、花の中心にもぐりこんで見えなくなってしまいました。
 キュウリは、ウリ科キュウリ属の一年生果菜。原産地はインドのヒマラヤ山ろくで、日本には中国を経て渡来したといいます。

   ノウゼンカズラは天をつかもうとして

 天つかむ ノウゼンカズラに 励まされ
 歩く、しゃべるの
 五時間の業(ぎょう)

 よじ登り 空(そら)つかもうと 花咲かす
 ノウゼンカズラか
 友らほがらか

 二〇〇四年六月十九日午後、東京都狛江市(こまえし)にいきました。
 晴天。歩いていると各地でノウゼンカズラの花と出合いました。
 今年は初めての出会いです。
 いろんな木によじ登り、「この先は、もうないのか」とばかり、空に向かっている「すごさ」。
 圧倒されるような感じです。
 二〇〇五年六月三十日。特別の休み。午前九時から夜九時まで、地域を走り回りました。
 世の中を変えようとする群像を、間近に見ました。感激しました。
 同年七月四日、散歩をしていてノウゼンカズラと出会いました。
 よく花を見てみると、雄しべと雌しべらしいものが、上の花びらにぴったりとくっついているんですね。
 こういう仕組みで、花が斜め上に向かうようになっているのではないでしょうか。

   オシロイバナは午後の開花を待っている

 線のよな つぼみそろえて
 午後からの 開花待ってる
 オシロイバナは

 吉報を 両手にかかえ 夜中道
 オシロイバナが
 赤く咲いてた

 夜の道 ひょいと折れたら
 黄の光
 オシロイバナが 「お帰りなさい」

 二〇〇四年六月二十日午前、出勤の道でオシロイバナ(白粉花)に出合いました。まだ花は開いていませんでした。
 夜十時半前、職場で「東京都狛江市」の吉報を聞きました。
 その後、家路をたどり、家の近くまでくると、赤いオシロイバナが咲いていました。
 オシロイバナは、オシロイバナ科オシロイバナ(ミラビリス)属。別名、ユウゲショウ(夕化粧)。
 花は午後四時ころから開くので、英名ではfour-o'clockと呼ばれます。花の色は、赤、白、ピンク、黄色、絞り。
 この花の実は五ミリくらいの黒い実です。皮を取ると白い粉っぽい実が出てきます。

   ノカンゾウが緑のオアシスにいました

 ビル街に 緑のオアシス どんとあり
 ノカンゾウ花
 迎えてくれた

 前夜はほとんど眠れなかったのにかかわらず「泊まり明けの午後の散歩」を敢行しました。二〇〇四年六月二十三日のことです。
 行き先は、JR山手線、東急目黒線目黒駅東口徒歩十分、東京都港区白金台五の二一の五の国立科学博物館付属自然教育園です。
 ビル街の一角の起伏に富んだ池のある六万坪の雑木林です。
 元は四、五百年前の中世豪族の館。当時の名残の土塁も残されています。その後、江戸時代は松平讃岐守頼重(高松藩主)の下屋敷。明治時代は軍の火薬庫。大正時代は宮内庁の白金御料地に。一九四九年に天然記念物・史跡に指定され一般公開されました。
 いろんな植物に出合いました。
 ○ハンゲショウ。ドクダミ科ハンゲショウ属。水辺に咲いていました。最上部の葉の一枚の基部の分以上が白くなっています。白い葉に向かい合って細い穂状の花が咲いています。
 ○ノカンゾウ。ユリ科ワスレグサ属。「わーっ、合えたぞー」という感じ。湿原にやってきたような感じになりました。橙赤色の花を咲かせていました。花は朝咲いて夜にはしぼむ一日花です。
 ○トモエソウ(巴草)。オトギリソウ科オトギリソウ属。花は直径四、六センチメートルと大きく、花弁は五個あり巴型にねじています。多数のおしべがよく目立つところはビヨウヤナギによく似ていますが、ビヨウヤナギは花弁があまりねじれていません。一日花です。
 ○ヌマトラノオ。サクラソウ科 オカトラノオ属。なるほど、この花は尾っぽです。
 ○タカトウダイ。ウダイグサ科トウダイグサ属。
 ○コウゾ。クワ科コウゾ属。赤い実を、たくさんつけていました。食べたら、甘くておいしい! 樹皮の繊維から和紙を作ります。
 一時間半ほど歩いて帰宅の途に。JR武蔵小金井駅南口近くの「本町六丁目子供広場」に寄ったら、ここにもハンゲショウが咲いていました。

   ソケイの純白の花は身をそらして

 身をそらし 捨て身のごとく 向かいくる
 純白の花
 その名はソケイ

 二〇〇四年六月二十五日午後。泊まり勤務が終了。新宿御苑コースで帰ることにしました。「千駄ケ谷門」から入り、「新宿門」にぬけて、JR新宿駅を目指すという帰宅のコースです。
 雨の中、傘もささないで黙々と歩きました。八重のクチナシ、ムクゲ、アガパンサス、インドハマユウ、ハナシノブ、ソケイ……と、いろんな花に出合えました。
 ハナシノブ。ハナシノブ科。日本固有種。長さ十一-十五ミリ。世界中で、九州の阿蘇の草原だけに自生するとのことです。
 インドハマユウ。ヒガンバナ科の多年草。インド原産。すらりとのびた茎先にユリに似た大輪の純白の花が咲き誇ります。
 ソケイ(素馨) 。モクセイ科ソケイ属(ジャスミン)。インド北部・ネパール原産。花は白く、花弁の外側が淡紅色。香りが強く夜は特によく香ります。素馨は、中国の美人の名前に由来するとか。
 新宿御苑内の食堂で遅い昼食をとり、電車で家へ。帰るなり、倒れこむように寝て、夜十時ごろ起きて、明日の仕事の構えをして……というのが僕の日常です。

   ムクゲは身を巻き込んで

 街角の タチアオイ去り ムクゲ咲く
 季節の中を
 人いきかうか

 くるくると 身をしっかりと 巻き込んで
 落花している
 ムクゲの清さ

 ムクゲ白 パッと咲いたよ
 植えてった
 弟、きょうも 農に励むか

 二首目は、二〇〇四年六月二十七日、近所を歩いていての「発見」。
 二カ所で見ましたが、いずれも白花のムクゲでした。
 去っていく時でも「どうでもいいや」ではないところに心を動かされました。
 でも、少しさびしい短歌になってしまいましたね。
 八月九日午後、わが家の庭に白いムクゲの花を三輪咲かせていました。
 このムクゲは、年末から正月にかけて、わが家にやってきていた、高知県の弟が植えていってくれたものです。

   ネムノキは桃色の糸でつくった玉

 桃色の 糸でつくった 玉のよう
 近所の広場に
 ネムノキ咲いてた

 二〇〇四年六月、七月。比較的泊まり勤務が多く体の調整に苦心しています。
 六月二十九日、三十日が泊まりでしたが、三十日は帰ってきたらバタンキュー。よく寝たおかげで七月一日は午前八時に起きて、じっくり新聞を読んから、オートバイで銀行へいったり、自転車で食材を買いにいったり…。
 で、近くの都営団地の集会所の横の広場にネムノキが咲いているのを見つけました。細い糸で作った玉みたいな感じの花です。
 春には桜が奇麗な広場ですが、ネムノキがあったとは知りませんでした。
 ネムノキは、マメ科ネムノキ属の落葉高木です。
 英語では Silk tree です。
 おっと、そろそろ出勤の時間です。
 きょうも泊まり勤務です。よーっし、がんばるぞ。

   エゾイソツツジの絵はがき

 巡演の 友の絵はがき
 着いた朝
 エゾイソツツジが 微笑んでいた

 二〇〇四年十月五日朝、新劇俳優のKさんから私たち夫婦宛に絵はがきが届きました。
 「この花はいかが?」
 エゾイソツツジの花の写真でした。
 白い五弁の花がたくさん集まって球形をつくっています。
 北海道の花です。ツツジ科イソツツジ属。花が咲くのは六月とのことです。
 「札幌中央」の消印です。
 「こちらは、山道走ってる時、紅葉もきれいだけど、この前の台風で、木が根こそぎ倒れたり、折れたりしていました。旅班は順調にいってます」
 九月二日から十二月二十七日まで、関東、東北、北海道、甲信、東海、近畿、九州の一道一都二府十九県を巡演するとのことです。
 大変な仕事ですね。

   レインリリーが咲いた日

 息子(こ)の夢が かなった祝い
 夫婦して
 レインリリーを 鉢に植えてる

 二〇〇四年五月八日夜のことです。
 レインリリーは、 ヒガンバナ科ゼフィランサス属の多年草(耐寒性球根)です。マンジュシャゲの仲間なんですねー。別名は、ゼフィランサス、 タマスダレ。
 五月十五日、もういくつか芽が出ていました。楽しみです。
 わーっ、咲いた、咲いた。
 九月七日朝、わが家の門の手前のレインリリーが、一つだけ白い可憐な花を咲かせていました。
 いつになっても咲かないので、あきらめかけていたところでした。
 出勤の途中で見ていると国分寺市東元町の、もとまち図書館前のマンションのとこにも、渋谷区千駄ヶ谷の路地にも咲いていました。
 つつましやかに咲いているので、注意深く見ていないと見逃してしまいますね。
 この日は、すごい風の台風18号で九州、中国、四国は大変でしたね。そちらは、いかがでしたか。
 仕事を終えて夜十一時前に渋谷区の街に出たのですが、風がすごくて、近くのビルの縦型の看板が大きく揺れ続けていました。
 のっぽのドコモビルのほうを見たら、雲がすごい勢いで飛んでいました。
 国分寺駅南口前には消防車、パトカーが何台も止まって「何か」に備えていました。

   ユリノキが見てきたこと

 生きてきた 百三十年の 世を想い
 ユリノキ、青空(そら)に
 葉ばたいている

 二〇〇四年十月十七日午後、泊まり明けの「三時間の散歩」は、いつものとおり東京都の新宿御苑になりました。
 ジュウガツザクラが咲き始めていました。
 白やピンクのサザンカが咲いていました。
 チャの花が咲いていました。
 例の(百合の樹)に、また、圧倒されました。
 一八七六年ころに、ここに植えられた木です。
 樹高約三十五メートル、幹周約三・九メートルもあります。
 ユリノキは、モクレン科。初夏にチューリップのような白い花をつけます。英名は tulip tree です。
 もう紅葉し始めていました。

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