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2011.12.05

【短歌 二〇〇五年後半】

【二〇〇五年後半】

   東京から高知への単身赴任

 わが友の バイクも二台 荷に乗せて
 引越しトラック
 高知へ向かう

 新しい 任地に向かう 雨のなか
 白いムクゲが
 きりっと咲いてた

   高知市の新しい住まいで

 まっさらの 畳の香りに 包まれて
 独り寝初日
 「うん。これもいい」 

 「あれもない。これも忘れた」
 悔いている
 足りないだらけの 引越し二日目

   単身の宿ととのえて妻は去る

 ミンミンの 叫びの中で 目覚めてる
 高知の街の
 ど真ん中の家

 単身の 宿ととのえて 妻は去る
 ありがたいこと
 かけがえはなし

   やるべきことを書き出して

 明日(あした)やる
 いくつかのこと 書き出して
 きょう、この夜中 仕事を終える

 履歴見て
 「何の御用?」と いってくる
 単身赴任の 夫のもとへ

   トウモロコシをカリカリと食う

 晩飯に
 わが弟が 手をかけた
 トウモロコシを カリカリと食う

 単身の 野菜不足に 恐怖して
 ニンジンたっぷり
 朝の雑炊

 クジラ肉 ぐつぐつ煮ながら
 亡き母の
 ふしくれだった 手を思い出す

 次々と 焼いてる、食べてる 十八個
 ギョーザは、うまい
 やせるわけない

 「個食(こしょく)」って やな言葉だね
 「すき焼きで 一杯飲むか」
 弟、誘う

   息子のつれあいはベネズエラ

 息子殿 「いま、長崎さ」
 つれあいは 「ベネズエラだよ」
 僕は、高知さ

 ベネズエラ
 変化の中に あるという
 義娘(むすめ)、いまごろ 胸ときめいて

   百笑(どうめき)を聞きたくて

 熱風が 吹きつけてくる
 この感じ 高知の夏だ
 きょうも青空

 百笑(どうめき)聞く
 その日のために 走ってる
 昨日も今日も そして、明日(あした)も

   はやる心を静める手だて

 青空の 雲、ヒューヒューと 飛んでいく
 台風明けの
 高松の朝

 カン、カンと カンカン石を たたいてる
 静まれ、静まれ
 はやる心よ

   くろしお鉄道から見たもの

 車窓から 校舎の表示に
 「その通り!」
 「みんな輝く 楽しい学校」

 田の脇の 赤マンジュシャゲ
 めでながら
 くろしお鉄道 田野(たの)へと向かう

   四国、九州 オーバイの旅

 定着を 恐れているのか この男
 勢い込んで 
 旅に出る朝

 青空を 流れに抱いて ゆったりと
 四万十川は
 農の中いく

 手を広げ
 体いっぱい 太陽(ひ)を受けて
 ぎらぎら光る 宇和海、左

 身を溶かせ
 国家の悪政 いさめたか
 臼杵(うすき)石仏 下半身欠く

 ヤシ並木 マンジュシャゲ赤
 マッチして
 220号 ゆるやかカーブ

 青年に 遺書書かしめて 死なしめた
 統帥(とうすい)思う
 特攻基地跡

 子を抱く 観音像の 背を見れば
 十字の印
 「隠れ」の信仰

 このとりで 落とせず死んだ
 四郎らの 無念を思う
 富岡城跡

 放牧の 牛の背中に
 三ケタの 数字を記す
 所有の悲しさ

 「いつでもね。噴火する気は、あるんだよ」
 阿蘇の火口の
 硫黄の煙

 寝転んで 波の思いを 聞いている
 まどろみの中
 フェリー、宿毛(すくも)に

    南国市の国分寺のキキョウ

 巡礼を 迎え入れるか
 紫の キキョウ鮮やか
 ここ、土佐国分寺

 巡礼の 道との表示
 あぜのよな でこぼこ道を
 バイクでたどる

   キンモクセイに誘われてきた

 おお、かくも 「私ここよ」と 主張する
 キンモクセイに
 誘われてきた

 わが庭に 花の一つも ほしいもの
 テッポウユリを
 植え込んでいる

   高速バスでいききする日々

 カバン抱き 「さぁ、寝る時間」
 いい感じ
 高速バスで いききする日々

 「おつかれ」と 鏡の自分に いってやる
 ここ松山の
 ビジネスホテル
 

   花のかおりの中に寝てる夢

 ふりそそぐ 花のかおりの 中に寝て
 本読む時を
 夢見ているよ

 二つもの 携帯電話の アラームを
 「オフ」にしている
 休日前夜

   高知県の平和を求める群像

 戦争の おろかさ伝える
 掩体壕(えんたいごう)
 機銃の跡に 悲鳴聞いてる

 掩体壕 文化財に 指定して
 住民運動
 実りそうだよ

 アメリカの イラク撤兵 求めてる
 イベント続く
 帯屋町筋

 あの日から ピースライブは 十四回
 高知の人の
 確かな足取り

 九条を 守れの署名
 各戸ごと 訴える群れ
 清水も十和も

 靴脱いで ステージを跳ぶ 十九歳
 ロックの心は
 愛と平和と

 土佐弁で 平和の憲法 読み上げる
 二十二歳の
 穏やかな顔

 青年の 突進のさま 見ているよ
 心は仲間だ
 「すごいぞ、君ら」

   東京で独り暮らしの妻のこと

 夫をば 放し飼いかよ 離れ妻
 電話も、とんと
 こないこのごろ

 「何日も 電話なかった」
 妻がいう
 自分も何も いってこないで

 「久しぶり あなたの夢見た 大丈夫?」
 電話の妻の
 優しい口調

 かたわれが いない暮らしの
 ちぐはぐさ
 単身赴任で 気づいた一つ

 「会いたいよ。今月二回、やってきな」
 独居老人
 妻への電話

 温かい 灯ともる わび住まい
 月一回の
 妻がきてる日

 よれよれに アイロンかけてる
 妻がいる
 単身夫(たんしんおっと) 世話になってる

 そういえば 単身赴任も 半年か
 月一回の
 織姫テキパキ

   愛媛県四国中央市の友のこと

 君のこと
 僕はチング(長く親しい友)と 思ってる
 生き抜いてくれ 一杯やろうな

 病から 抜け出せそうな 友のこと
 ゆったりいこうか
 還暦世代
 

   東京の友、アメリカの友

 友からの
 酒温めて 飲んでいる
 師走の夜の 寂しい一夜(ひとや)

 アメリカの 友のファクス 着いた朝
 いよいよ世界も
 狭くなったか

   高知県梼原の紙すきの里を求めて   

 紙すきの 里を求めて
 山道を 向かうバイクに
 雪、降りしきる

 この仕事 一つなしとげ 死なんとも
 悔いはないかも
 アクセル吹かす

 「ここまでを バイクできたか」
 それぞれに
 あきれる人と 危ぶむ人と

 紙をすく オランダ人と 会っている
 梼原町の
 山間の家

 紙すいて 芸術にして 店に出す
 すごいね、紙は
 ここまでできる

    日照りにも、雪にもめげて…

 日照りにも 雪にもめげて
 たっすいが
 四国の仕事 楽しんでいる

   二カ月で 五十九歳か いい歳だ
 金髪頭を
 鏡に映す

 やることを 書き連ねている 前の夜
 三十三ある
 ま。一つからやる。

 いっぱいに
 食べ散らかすよに 手を広げ
 自分をせめてく 日々のありかた

 ぐちぐちと しゃべってみたい 時もある
 独りで切ない
 ある夜のこと

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