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2013.06.07

大阪市・母子餓死事件からと生活保護を考える

  大阪市での母子餓死事件に強い衝撃を受けました。

 ニュースを知って一番先に思ったのは「生活保護はどうなっていたんだろうという」ということでした。

 その観点から、この事件を考えてみたいと思います。

 まず、事件の概要を報道からまとめます。

 五月二十四日、大阪市北区のマンションの一室で、井上充代さん(二十八歳)と息子の瑠海(るい)ちゃん(三歳)が亡くなっているのが発見されました。

 検視結果などによると、今年二月には死亡していたとみられます。

 二人の胃に内容物はなく、死因は餓死とみられています。

 部屋には、こんな内容のメモが残されていたといいます。

 「最後におなかいっぱい食べさせられなくて、ごめんね」

 部屋の中には冷蔵庫はなく食べ物としては食塩があるだけでした。

 充代さんと夫が署名した離婚届がありました。

 電気、ガスは止められていました。

 口座に残されていたお金は数十円でした。

大阪市北区には住民登録をしていませんでした。

 井上さんは広島県出身。五、六年前に結婚。その後、瑠海ちゃんを出産し、大阪府守口市で暮らしていました。

 守口市に住んで一年ほどで夫の姿が急に見えなくなりました。井上さんは瑠海ちゃんを託児所に預け、大阪市・北新地の飲食店で働き始めました。その頃から金銭に困窮し、急激にやせ始めました。

 井上さんは、昨年七月には、当時住んでいた大阪府守口市の役所に、生活保護の相談に訪れていました。市役所の担当者も自宅を訪問しました。しかし、井上さんは生活保護の申請をしませんでした。

 昨年十月、夫が突然、自宅に帰ってきました。

 すると翌日、今度は井上さんが瑠海ちゃんを連れて家を出ました。

 その約七か月後、守口市の自宅から電車で二十分ほどのマンションで井上さん母子の遺体が発見されました。

 事件の経過を見ても、井上さんは、一度は行政に生活保護の相談に行っています。

 ここで行政が井上を救うことができるチャンスがありました。

 しかし、それが、そうはなりませんでした。

 井上さんが生活保護の申請をしなかったのがなぜかはわかりません。もしかしたら、心理的なこだわりがあったかもしれませんし、生活保護を申請することで夫に問い合わせがいき現在の居所を知られてしまうことを恐れたのかもしれません。

 行政は、井上さんの実情をしっかり聞きとれば、彼女が生活保護を必要としていることはわかったと思います。権利として生活保護を受けられることをつげ、積極的に申請することをすすめるべきでした。そこのところの実際はどうだったでしょうか。

 日本国憲法は第二十五条で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。/ 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と定めています。

生活保護法は、つぎのことをうたっています。

〈第一条  この法律は、日本国憲法第二十五条 に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

第二条  すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。

第三条  この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。〉

 しかし、いま、政権や一部マスコミのなかに生活保護を受けることを攻撃するような空気がつくられています。それが、多くの人の「助けて」という声を押さえつけています。

 政権やマスコミは、最後のセーフティーネットである生活保護を受けることは日本国憲法にもとづく正当な権利なのだという考えをこそ普及していくべきです。

 また、今回の事件では、電気やガスが止められていました。そういう異常事態になっていることが業者から行政に告知され、それを受けて行政も手を差し伸べるというシステムはつくれないのでしょうか。

 こうしたことから考えると現在、国会で審議されている生活保護法の一部改正案と生活困窮者自立支援法案は、大きな問題を抱えています。

 最大の問題点は、生活に困窮した人が生活保護の申請をおこなうときに、書類の提出を義務づけるということにあります。

 これまでも、生活保護行政の現場では、保護を求めてきた人を単なる「相談者」として扱い、申請を断念させて追い返す「水際作戦」が横行してきました。「必要書類がそろっていない」ことを理由に申請を断念させることは、「水際作戦」の常套(じょうとう)手段としておこなわれてきました。

 しかし、現行制度では、保護申請は口頭でも可能とされ、行政はそれに応じる義務を負っています。不当な門前払いが発覚すれば、違法行為として断罪され、行政も指導せざるを得ない仕組みになっています。

 今回の法案は、この「水際作戦」を合法化するものです。

 生活保護法改悪案と生活困窮者自立支援法案は、六月四日、衆議院本会議で、自民党、公明党、民主党、維新、みんな、生活の各党の賛成多数で可決、参議院に送りました。

 日本の生活保護で早急に解決が迫られているのは、収入が最低生活費未満の人が生活保護を受けていない―捕捉率が低いという問題です。捕捉率は日本では二割程度です。ドイツの六割、イギリスの五~六割、フランスの九割と比較して、異常な実態です。

 今年五月、国連社会権規約委員会から日本政府に出された「総括所見」は「恥辱のために生活保護の申請が抑制されている」ことに「懸念」を表明し、「生活保護の申請を簡素化」し「申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとる」こと、「生活保護につきまとう恥辱を解消する」手だてをとることを勧告しています。

 政権は、これにこそとりくむべきです。

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