« 「生活保護法の改悪に反対する研究者の緊急共同声明」運動に寄せて | トップページ | 【反戦詩】 中野重治の「新聞にのった写真」、「兵隊について」 »

2013.06.18

【反戦詩】 北川冬彦の詩集『戦争』のアピール 

 詩人、映画評論家の北川冬彦(本名・田畔忠彦=たぐろ ただひこ。一九〇〇年六月三日~一九九〇年四月十二日)は、一九二九年十月十五日に詩集『戦争』(厚生閣書店)を出版しました。
 彼は詩集『検温器と花』(一九二六年十月二十五日。ミスマル社)でも戦争をテーマにした詩、「平原」を載せていました。

  平 原

 平原の果てには、
 軍団が害虫のように蝟集[いしゅう]していた。

 平原の果てにハリネズミの毛のように軍団が寄り集まっている。映画の一シーンを見ているような短詩です。
 戦争というものの不気味さは表現されています。しかし、どこの軍団で、攻めようとしているのかも守ろうとしているのかも不明です。
 『戦争』のなかの戦争をテーマにした詩は、対象も伝えたいことも明確です。

  戦 争
  
 義眼の中にダイヤモンドを入れて貰ったとて、何になろう。苔の生えた肋骨に勲章を懸けたとて、それが何になろう。

 腸詰をぶら下げた巨大な頭を粉砕しなければならぬ。腸詰をぶら下げた巨大な頭は粉砕しなければならぬ。

 その骨灰を掌の上でタンポポのように吹き飛ばすのは、いつの日であろう。

 「義眼」や「肋骨」は、戦争で障害者になったり、亡くなった人を意味していると思います。
 そんなになってダイヤモンドや勲章をもらっても、しょうがないのさ、という詩です。
「腸詰をぶら下げた巨大な頭」とは、戦争によって富を得ている死の商人たちや、そのおこぼれにあずかっている人たちのことでしょうか、それとも戦争の総指揮者の天皇のことでしょうか。
そのような戦争悪は「粉砕しなければならぬ」とくりかえしています。
 
  大軍叱咤

 将軍の股は延びた、軍刀のように。

 毛むくじゃらの脚首には、花のような支那の売淫婦がぶら下がっている。

 黄塵に汚れた機密費。

 これも映像性の高い詩です。
 将軍と限定的にいっているのがすごい。

機密費という言葉が出てきます。これについては評論家の鶴見俊輔が、しんぶん赤旗、二〇〇二年四月十四日付に寄せた談話で語っています。

私は戦争中、バタビア(現在インドネシアのジャカルタ)の海軍武官府にいて、金庫の中で機密費と普通の予算が区別されていたのを知っているんです。機密費はいついくら出したと書いておけばよくて、私が扱った経理の帳簿には記帳する必要がないんですよ。

 何に使うかというと、政府や軍の高官がやってきたときの宴会の費用としてでした。作戦上の機密じゃないんです。末端での習慣なので、他の軍でも同じだったのではないでしょうか。〉

 【参考文献】

 ・鶴岡善久編集『北川冬彦全詩集』。沖積舎。一九八八年一月二十日。

|

« 「生活保護法の改悪に反対する研究者の緊急共同声明」運動に寄せて | トップページ | 【反戦詩】 中野重治の「新聞にのった写真」、「兵隊について」 »

文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/30274/57618856

この記事へのトラックバック一覧です: 【反戦詩】 北川冬彦の詩集『戦争』のアピール :

« 「生活保護法の改悪に反対する研究者の緊急共同声明」運動に寄せて | トップページ | 【反戦詩】 中野重治の「新聞にのった写真」、「兵隊について」 »