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2013.06.26

【反戦詩】上野荘夫の「戦争へ!」。

  上野荘夫(通称ソウフ。戸籍上はソウオ。一九〇五年六月二日~)は「戦争へ!」という詩を書いています(一九二九年一月三十日発行の『新興文学全集 第十巻 日本編X』、平凡社)。天皇の中国侵略軍の兵たちの殺し、殺されるたたかいでの苦悩を描いています。

   
 ざつく ざつく ざつく ざつく
 ……どたり どたり ばた ばた………
 ぼろぼろの人間の肢体を見ろ
 蒼ぶくれたでくのぼう(、、、、、)の無限の列を見ろ
 ――こいつは動いて行く灰色の鎖だ
 ――こいつは歩いて行く屍骸の群だ
 口を空けてゐる
 白い眼を見開いてゐる
 銃剣をギラギラと光らせてゐる
 どたり どた ばた ばた………
 ……ざつく ざつく ざつく ざつく
 ――こいつは雑巾のやうに疲れ切った武器の密集部隊だ!

  黄色い海だ
  黄色い港だ
  黄色い街だ
  黄色い高粱畑だ
  支那だ!

 ばたり ばたり どど どど………
 何処かで赤ん坊が泣いてゐる
 ざつく ざつく ばた ばた………
 何処かで赤ん坊が泣いてゐる
 ――おっ母あ
 背中の餓鬼が泣いたら乳を呑ましてやるがええ
 畑にや真黒に烏がたかつて田圃にや水が涸れてゐたつけ
 あゝ
 赤ん坊は草刈籠の中で田のくろに泣いてゐやがった――
 ざつく ざつく どた どた……
 生きちや帰られめえ!
 ……ばたり ばたり

  黄色い高粱畑だ 支那だ!
  埃だ、風だ、射撃だ!

 ――隊長殿、疲れました
 ぢた ぢた…… ざつく ざつく ざつく
 考へても見ろよ、兄貴!
 俺あ娘つ子をやつつけたんだ、色の白い丸つこい十五の娘つ子を!
 俺の妹が会社の野郎にやつつけられた時にや……
 ――進軍だぞオ!
 ぢた ぢた ざつく ざつく ざつく
 ばた…… ばた……

 黄色い埃だ、支那だ!
 だが何だつて支那人を殺すんだ! えゝ?
 あゝ、おれは千人の中の一人なんだ
 千人の中の一人は殺すか殺されるかなんだ
 だが、何だつて――

 ぐわツつ ぐわツつ どど どど
 おれの故郷は海の向ふよ
 おれの寝床は海の向ふよ
 だが、海の向ふでだつて満足に眠れたことなんか無かつた
 いつも……いつも……飢えてゐたんだ
 ばた ばた ざつく ざつく ざつく……と

     進軍だぞオ!
   進軍だ!  
 進軍!
 何処へ行っても何処へ逃げても、あゝ
 進軍!
   進軍だ!
     進軍だぞオ! ばた ばた ばた

 こいつは武装された黄色い死骸の列だ
 こいつはどこまでもどこまでも殺(×)しに行く屠殺者の群だ
 こいつはどこまでもどこまでも殺(×)されに行く豚の群だ
 蛇のやうにのろのろと
 狼のやうにばたばたと
 ――そら、むしり取られた肢だ
 ――そら、えぐり抜かれた眼球だ
 頭と 肩と 腕と 銃と 剣だ
 ばらばらに引き裂かれた雑巾のやうな人間の群だ
 ざらり ざらり ごと ごと ごと……
 千人の中の一人だ、後を向いてゐるのは!
 千人の中の三人だ、殺すより殺されることを欲してゐるのは!
 だが、ばたり ばたり ごと ごと ごと

  えい!
  殺されろ 殺されろ 殺されろ 殺されろ
  畜生、犬殺しの奴等め!

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