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2013.06.27

【反戦詩】上野荘夫の「兵士の歌」。

  上野荘夫は「兵士の歌」という詩を書いています(一九三三年十一月
の『無産者詩集 第二輯』)。中国に派遣された、ある日本兵にみずからの蛮行の数々を語らせています。

 おれは酔つぱらひのやうに舗道を歩く
 おれは気ちがひのやうに血眼になつて探し廻る
 おれは野良犬だ、血だらけの街を嗅ぎ
 おれは彼奴らの怒りを背中に感じながら憎々し気に笑ふ

 白昼、この破壊された街路で何がなされたか
 夜、この蜂の巣のやうに弾丸の討ち込まれた扉の中で何がなされたか
 昨日、河べりの叢であいつを俺はどうしたか
 今、赤い煉瓦塀の前で支那人どもがどんな眼にあはされてゐるか

 どこからどこまで血だ!
 そして、何から何まで血だ!
 この呪はれた血と破壊の中で俺は声高く笑ふ
 ――憎々し気に、狂犬のやうに

 あの男は扉の前で、眼を剥き、手を空に伸し、からだを慄はせ、喚き、倒れ、血を吐いたのだ
 あの女は部屋の隅に、手で乳房を押へ、恐ろしさに眼を見開き、髪を毮り、素裸のからだを辱(×)しめられたのだ
 子供は天井に釣り下げられ
 妊婦は二つに引き裂(×)かれた――
 至るところの街路で、部屋の中で、叢で、見えない煉瓦塀のかげで――血だ!

 おれは銃を握つてゐる
 おれは剣をブラ下げてゐる
 そしておれは酔つぱらひのやうに街を歩きまはり、建物の中へ侵入して行く

 何処で、誰が、どんなことをされたか?
 何処で、誰が、どんなことをしたか?
 今、支那(××)で、何が起こつてゐるかを考へて見ろ!

 鼻曲りの苦力は眼の前で素つ裸にされる娘を見てゐる
 乳呑児は母親の乳房からもぎとられ、母親は何処かへ連れ去られる
 何処かへ
 おゝ、何処かへだ!

 見ろよ、これが戦争(××)だ!
 これが海を渡つて来た俺たちの仕事だ!

 ――べっとりと血塗られた、街路、家、くさむら、河!

 子供を探す母親の眼が
 恋人を探す娘たちの眼が
 怒り、恐れ、呪ひ、わめき、祈るそれ等の眼が
 流された無数の仲間の血を見凝めてゐる!
 ――そして
 おれは酔つぱらひのやうに舗道を歩き
 狂人のやうにそれらの憎悪に向つて突進する
 おれは野良犬のやうに嗅ぎまはり
 そいつらの怒りに対して声高く笑はうとするのだ!

 たゞ、俺が呪はれた一兵卒であることの故に――

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