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2013.06.28

【反戦詩】 大道寺浩一は、一九三三年二月の『戦列〔詩・パンフレット第三輯〕』に「軍服を着た百姓」を発表しました。

 大道寺浩一は、一九三三年二月の日本プロレタリア作家同盟出版部刊『戦列〔詩・パンフレット第三輯〕』に「軍服を着た百姓」を発表しました。

 雪に閉ざされた茅屋(ぼうおく)の村々
 激流は山に谺(こだま)し
 空を蔽う雲は胸に群る暗さ
 百姓のくらしは飢え凍えても
 皇軍のいさおしを伝えられる冬
 山脈を殴る北国の吹雪の荒れ狂う日      
 おれは君の名誉の戦死を報らされた

 村のため、国家のためじゃ!
 勇敢なる宮(×)城連隊、東北の健児よ!
 地主の村長はそれを伝え
 村葬の花輪に飾られた君の白骨よ
 君の親父の泪(なみだ)はその誉れにかわき
 二千円の金一封を戴く手は慄え
 それを見るおれの心は戦(おのの)いた!

 おお! 三ヵ月前の君よ
 おれ達は田を奪われた仲間達と
 村有の不毛地を借りて耕した
 いくらかでもの来年の収穫(とりいれ)をあてにしながら
 新田を拵らえるおれだちの手は凍え
 鍬先はひっきりなしに砂利を嚙んだ
 霜柱のとけぬその日
 君は一枚の赤い紙切れを受取った
 一九三二年十月 万歳の轟く停車場で
 親父の皺は君の泪をそそり
 女房の鳴咽(おえつ)は顔を曇らせた
 だがおれたちに差しのべた握手の手は固く
 その眼は虐げらるる者の怒りに満ち
 銃剣を持つ決意はおれたちのものだった

 戦線からの音信(たより)はたった一度――
 雪に埋れた茅屋の中で
 仲間達と語る藁仕事の合い間に
 堆肥をつけた橇を曳きながら
 おれたちはどんなに君を思うていたことか!
 ああ! 飢え凍える川添いの村に
 君は今 名誉の戦死者

 共に語り 共に働いた仲間よ
 ソヴェートの国、
 シベリヤの凍原(ツンドラ)から吹き荒ぶ風に
 蒙古の砂漠を砥めて来る寒風に
 君の孤独は何を孕んだのか?
 荒涼とした草原の上
 北満の野に垂れ下る空は低く
 動くものは灰色の雲と銃剣持てる百姓
 僅かにもりあがるみみず腫れの丘の陰から
 隼(はやて)のように襲いかかる一団
 領土を死守するパルチザンに
 君は銃剣を振りかざしたのか?

 川鳴りの冴え響くころ
 雪の曠野に青空が浮かんだ朝
 君の葬式が済んでから七日目
 窃(ひそ)かにに君の遺族を訪れた二人の憲(×)兵
 やがて、彼等は橇を走らせながら
 おれたちの組合、
 全農××県連×××支部にやって来た
 おお! おれたちと共に語り共に働いた君よ
 今こそおれたちははっきりと知ったのだ!

 豊饒なる満洲国 我が生命線を守るとて
 おれたちの仲間中国の百姓を虐殺(×)するために
 銃剣の嵐を捲き起す日(×)本帝国主義
 白馬の蹄に銃(×)口を向け(××)て斃れたる君
 おお! おれたちの名誉の戦死者よ
 君の白骨よ 党(×)の礎
 礎に誓う幾百万のおれたち!
 ――北国の吹雪は飢餓の嵐
 心には憎悪を刻み 胸には血にいろどられた花輪
 おれたちはそれを手向けて――
 君の白骨に静かなる黙禱を捧げる!

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