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2013.07.19

【槇村浩研究のために】 槇村浩が『間島パルチザンの歌』を書くなかで考えていたこと。

 一九三一年末、槇村浩と毛利猛夫が文化運動について話し合いました。毛利猛夫の「『旧友』としての槇村のこと――『間島パルチザンの歌』が出来た頃」――」(槇村浩の会『ダッタン海峡 第八号』。槇村浩の会。一九九二年六月一日)に載っています。
 <一九三一年の末、二人で文化運動について話しあっていて、われわれの陣営内の詩人たちの作品がレトリック[文章に豊かな表現を与えるための技法]の点において純粋詩派[?]にはなはだ劣っていることが話題となり、レトリックの向上のためには訳詩が良い、まず乃公(だいこう)[わがはい]からというから、やってみよう」ということで、槇村はエドガー・ポウの〝ユリイカ〟を、私はランボーの〝酔いどれ船〟をメーデーまでに仕上げては………と話しがすすんでいたが、槇村が、「ランボーといえば先日図書館で読んだが……富永太郎が」と真顔になって話し出した。
 それは――――富永は何かの雑誌で、
 『抒情の叙事史[ママ]的進展という方法の点で ランボーの〝酔ひどれ船〟に学ばなければならない』
と言っていたと言うことである。

槇村はそれについて自分の意見を述べた。「抒情というのは、まず、社会における個人における個人の創造性の自覚であるということだろう。この出発点は純粋詩派でもわれわれプロレタリア詩でもかわりはない。それから凝集[散らばったりしていたものが、一つに集まり固まること]をめざして短詩型をとるか、あるいは論理的若しくは叙事詩展開を心掛けて長い詩となるかは ひとにより、時により、またことによりけりだろうが、この展開で思想性がハッキリするわけだ。」そして自分の詩について語った。
(「生ける銃架」は詩作ノートの中の草稿としてあった)

「『生ける銃架』の素材は、詩の中のビラまきの光景を中心に配列されて、悪く言えば、叙景と抒情と標語の羅列に終わっている感がある。
 「抒情の叙事史的展開」となるよう文を練り直してみたいと思う。ランボーの『酔ひどれ船』にはよく言われるように、パリ・コンミューンの頃の二、三年の個人的体験がよみこまれている。絢爛[けんらん]たる措辞[そじ。詩歌・文章などの言葉の使い方]の集積だけではない。
 抒情の叙事史的進展とはそれを言うだろう。」
 彼の言うことはこういうことだった。
 そして、『生ける銃架』をも素材をみなおして叙事詩(譚歌(バラード)ではなく)に展開してみたい、ということであった。
 こういう話し合いがある中で『間島パルチザン』の初稿がつくられつつあった。
 パリ・コンミューンや国際婦人デーの盛りたくさんな行事のある三月を前にしての頃である。彼はその草稿を浜田勇や池本良三郎に、また信清悠久にも、一部を読んで聞かせていたとのことである。
 また、一九三二年春、『働く婦人』であったと思うが、パリコンミューンと詩人たちの関連の記事が出ていた。
 多分、大江満雄の文章だったと思うが、ルイズ・ミシェルの詩の紹介が書かれ、地域でのストライキ闘争をうたったものだった。
 その中の一行に
 「わたしたちはブルターニュの男と女」というのがあった。
 槇村は、
 「これは良い、ブルターニュ地方と咸鏡道[かんきょうどう、함경도、ハムギョンド]地方は、フランスと朝鮮にあってともに反抗的ということで中央権力に差別待遇をうけたことがあるのだ」
 と言ってあの 効果的なリフレーンの句
 「おれたちは咸鏡の男と女」
 を書きしるしたことだった。

 『間島パルチザンの歌は、槇村もまた私も活字になったのを見たのは一九三六(昭和十一)年なってからであった。 >

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