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2013.07.23

連載 三 タイムマシンで「生ける銃架」の十九歳に会い行く 反戦詩人・槇村浩の誕生。【反戦詩の歩み】

 この原稿は反戦詩人のことをテーマにしていますので、まずは、日本における反戦詩について書いておきます。
 日本では一九六八年、天皇をようする軍勢が長く続いた江戸幕府を倒し、政権につきました。この政権は一八七一年四月、軍隊を創設しました。天皇の私兵としての性格の強いものでしたが、一八七三年の徴兵制度の施行にともない国家の軍隊としての体裁をととのえます。一八八九年、天皇は大日本帝国憲法を決めますが、そこで「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」とし、日本の軍隊は運営、軍備の拡充、出動についても大元帥である天皇が支配することになります。天皇の軍隊です。
 天皇の軍隊は、うちにあっては内乱鎮圧、一揆や争議、反戦的な運動の鎮圧にあたりました。そして、一八七四年五月二十二日の台湾上陸をはじめとして朝鮮、中国への侵略戦争をくりかえしました。
 侵略戦争とは、ある国の軍隊、軍属が他国に乗り込んで、その国の施設を破壊し、物資や人を略奪し、人々を傷つけ殺し、その国を意のままにしようとする行為です。自国の民衆を家族から切り離し兵として駆り出し、そうした行為をすることを強います。その過程で自国の兵士の多くも傷つき、死にいたります。
 一九二八年八月二十八日、日本は、国際紛争を解決する手段として、締約国相互での戦争を放棄し、紛争は平和的手段により解決することを規定した「戦争抛棄ニ関スル条約」という多国間条約に署名します。しかし、日本は、これ以降も侵略戦争をくりかえしていきました。
 侵略戦争の進展のなかで国民のなかから、そのことを批判する声が起こりました。朝鮮を戦場とした日清戦争(一八九四年~一八九五年)のなかで初めて反戦の思いを抱いた詩が発表され、戦後もそうした詩の発表が続きます。
 日露戦争(一九〇四年~一九〇五年)のさなかにも反戦の詩が発表され、この戦争のあとも、反戦詩発表のもりあがりがありました。
 中国への侵略戦争の進行のなかでも、反戦詩が生まれました。
 これらの反戦詩の内容は、・軍隊という組織そのものへの懐疑、・日本の軍隊が海外に侵略して外国で殺戮、強奪、強姦などの蛮行をすることへの批判、・侵略軍に動員された夫や兄弟、息子の無事を願うもの、・大日本帝国の侵略をやめさせようという立場のもの、・反戦の運動そのものを伝えるもとの多様です。
 日本の反戦の詩の群は、侵略戦争をくりかえし、拡大していった天皇制権力のまえに両手を広げて立ちはだかろうとした人々の幸せ、平和を希求した詩人たちの魂の記録です。
 天皇の政権は、反戦詩が発表された本や雑誌を発売禁止にする、反戦詩の作者を別件で逮捕、投獄するなど圧迫を加えました。天皇の政権の追随者たちは反戦詩の作者を批判しました。
 そうしたなかで反戦詩の作者の多くは、たとえば与謝野鉄幹、与謝野晶子やのちの一群のプロレタリア詩人のように、のちには好戦の作品を書くようになります。
 しかし、反戦の立場をつらぬいて圧迫のなか短い命を燃やした詩人も少なくありません。
 この研究では、そのなかの一人、吉田豊道(槇村浩)のことを追っています。彼の反戦詩は、大日本帝国の侵略をやめさせようという立場のものでした。
 この原稿では、一九三二年の大日本帝国の満州国建国ころまでの反戦詩を研究対象にしています。

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