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2013.07.24

連載 二十八 タイムマシンで「生ける銃架」の十九歳に会い行く 反戦詩人・槇村浩の誕生。【『戦旗』の反戦詩群】

 吉田に影響を与えたと思われる機関誌『戦旗』の反戦詩を読んでみましょう。
 上野壮夫は、一九二八年七月号に「戦争へ!」を書きます。日本の中国侵略軍の兵たちの殺し、殺されるたたかいでの苦悩を描いています。

   
 ざつく ざつく ざつく ざつく
 ……どたり どたり ばた ばた………
 ぼろぼろの人間の肢体を見ろ
 蒼ぶくれたでくのぼう(、、、、、)の無限の列を見ろ
 ――こいつは動いて行く灰色の鎖だ
 ――こいつは歩いて行く屍骸の群だ
 口を空けてゐる
 白い眼を見開いてゐる
 銃剣をギラギラと光らせてゐる
 どたり どた ばた ばた………
 ……ざつく ざつく ざつく ざつく
 ――こいつは雑巾のやうに疲れ切った武器の密集部隊だ!

  黄色い海だ
  黄色い港だ
  黄色い街だ
  黄色い高粱畑だ
  支那だ!

 ばたり ばたり どど どど………
 何処かで赤ん坊が泣いてゐる
 ざつく ざつく ばた ばた………
 何処かで赤ん坊が泣いてゐる
 ――おっ母あ
 背中の餓鬼が泣いたら乳を呑ましてやるがええ
 畑にや真黒に烏がたかつて田圃にや水が涸れてゐたつけ
 あゝ
 赤ん坊は草刈籠の中で田のくろに泣いてゐやがった――
 ざつく ざつく どた どた……
 生きちや帰られめえ!
 ……ばたり ばたり

  黄色い高粱畑だ 支那だ!
  埃だ、風だ、射撃だ!

 ――隊長殿、疲れました
 ぢた ぢた…… ざつく ざつく ざつく
 考へても見ろよ、兄貴!
 俺あ娘つ子をやつつけたんだ、色の白い丸つこい十五の娘つ子を!
 俺の妹が会社の野郎にやつつけられた時にや……
 ――進軍だぞオ!
 ぢた ぢた ざつく ざつく ざつく
 ばた…… ばた……

 黄色い埃だ、支那だ!
 だが何だつて支那人を殺すんだ! えゝ?
 あゝ、おれは千人の中の一人なんだ
 千人の中の一人は殺すか殺されるかなんだ
 だが、何だつて――

 ぐわツつ ぐわツつ どど どど
 おれの故郷は海の向ふよ
 おれの寝床は海の向ふよ
 だが、海の向ふでだつて満足に眠れたことなんか無かつた
 いつも……いつも……飢えてゐたんだ
 ばた ばた ざつく ざつく ざつく……と

     進軍だぞオ!
   進軍だ!  
 進軍!
 何処へ行っても何処へ逃げても、あゝ
 進軍!
   進軍だ!
     進軍だぞオ! ばた ばた ばた

 こいつは武装された黄色い死骸の列だ
 こいつはどこまでもどこまでも殺(×)しに行く屠殺者の群だ
 こいつはどこまでもどこまでも殺(×)されに行く豚の群だ
 蛇のやうにのろのろと
 狼のやうにばたばたと
 ――そら、むしり取られた肢だ
 ――そら、えぐり抜かれた眼球だ
 頭と 肩と 腕と 銃と 剣だ
 ばらばらに引き裂かれた雑巾のやうな人間の群だ
 ざらり ざらり ごと ごと ごと……
 千人の中の一人だ、後を向いてゐるのは!
 千人の中の三人だ、殺すより殺されることを欲してゐるのは!
 だが、ばたり ばたり ごと ごと ごと

  えい!
  殺されろ 殺されろ 殺されろ 殺されろ
  畜生、犬殺しの奴等め!

 同じ号に三好十郎(みよしじゅうろう。一九〇二年四月二十三日~一九五八年十二月十六日)の「山東へやった手紙」が載ります。中国の山東に出兵している「甚太郎オジサン」への手紙のかたちをとって」中国人を殺してはならないと訴えていました。

   1

 甚太郎オジサン
 コノ袋ノ中ニワ
 仁丹ト ウカイ散ト
 手ヌグイガ入ットル
 ソレカラ、ノンキーガ入ットル
 昨日、裏ノ、オ染サントニ人デ
 町カラ買ッテ来タモノデス。
 ウカイ散ワ、
 腹ノ痛カ時二飲ムトデス。
 ソシテ、甚太郎オジサン
 剣ツキ鉄砲デ
 突キ殺ロサレンヨーニシナサイ

   2

 水ガ ケダモノノヨウニ
 ウォーウォー ト言ッテ流レタ。
 ソレデモ ソレデモ、
 僕達ワ 田ヲ作ランナラン
 ダカラ 皆ワ ダマッテ
 黒イ姿デ 水ヲ睨ンデイタ。
 帰ッテミタラ
 足ニ ビルガ 三匹ツイテイタ
 甚太郎オジサン
 殺サレンヨーニナサイヨ。

   3

 オ染サンガ新聞ヲ読ンデクレタラ
 日本軍ガ合戦二勝ッタソーデスネ
 オジサンモ戦ッタノデスカ
 ソシテ敵ヲ殺シタノデスカ。
 オジサンワ 言イマシタ
 支那ワ ホントワ俺達ノ敵デワ無イヨ
 シカシ 出征シナンナラン
 行キタク無イノ二行カンナラン
 殺シタク無イノニ殺サンナラン
 四五日前ニ、コチラデワ
 田植ヲ ミンナ スマセタ。
 土手ノワキノニ段田ヲ
 ーバン終リニ 植エマシタ。
 ナガセ ガ アンマリ長クテ
 ー度、土手ガ切レソーニナリ
 ニ晩モ村ノ人達ワ、番ヲシマシタ。
 僕モ番二行ッタケレドモ
 今年カラ田植エノ手伝イヲシタノデ
 腰ガ折レソーニ痛カッタ。
 シカシ、土手ガ切レルト
 又、田ガ メチャメチャ ニナル
 スルト 米ガ オサメラレンケン
 地主ノ鬼ガ イジメル。
 米ヲ作ルノワ 僕達デ
 ソレヲ取ルノワ 鬼ダ。
 暗イ土手ノ上カラ
 暗イ大川ノ水ヲ ジット見テ
 ミンナデ ジット 立ッテイタ
 ミンナ 何ントモ ロヲキカン
 僕ワ 涙ガ出ソーニナッタ。
 ドータンノゴト
 ホントノ敵ワ支那ジャナカ
 殺サンナランノワ 外国ニワ居ラン
 ソイデモ出征セニャナラン
 支那兵ヲ殺サンナラン
 ゾータンノゴト。
 オジサンワ、ソー言ッタ
 シカシ、ヤッパリ殺シテイル
 歯ヲ食イシバッテ殺シテイル。
 甚太郎オジサン
 殺サンゴトジナサイ
 殺サンゴトシナサイ
 シカシ、ソレデモ、オジサンワ
 剣ツキ鉄砲デ突カンナラン。
 ソシテ僕達ワ ガーガー言ウ暗イ水ヲ睨ンデ、
 田ノ番ヲセンナラン
 コレワ、ドースレバヨイカ
 ドンナコトヲスレバョイカ
 学校ノ先生モッテクレンケン
 修身ノ本ニモ書イテアリマセンケン
 甚太郎オジサン
 ドースレバヨイカ
 ソレヲ山東カラ書イテヨコシテクレ
 ザンゴーノ中カラ
 殺シテワイケナイ支那兵ヲ
 殺シタ手デ
 カチカチ フルエル手デ
 血ダラケニナッタ手デ。
 ソレマデ 僕達ワ
 ダマッテ
 地蔵サンノョーニ立ッテ
 鬼共ノ田ヲ守ッテ
 土手ノ上カラ
 ドブリドブリ 流レル
 ニゴッタ水ヲ見ツメテオリマス。
 足ヲビルニ喰ワレテ立ッテイマス。

 一九二八年十月号に宮木喜久雄(一九〇二年~)は、「勲章」を発表します。

 
 それは眼に止らない位の小さな新聞記事だ
 戦死病歿した六十三人の兵隊に
 勲章をくれる記事だ
 直接交戦に戦死したものには一番いい勲章を
 流弾にやられたものには少しいい勲章を
 日射病やチブスで死んだものには安い勲章を呉れるのだ
 六十三人の息子が死んだかわりに
 百二十六人の両親が またその兄弟 息子が
 勲章一つを貫うのだ。          
 勲章一個は何銭かで出来る
 有難い年金で米の幾升かは買える
 それが苦労して育てて来た息子の代価だ
 夫をとられた妻の手にこっそり残ったものだ。 
 やがて無名戦死者の碑に花環が飾られるだろう
 その前で小学生たちは
 敵を呪う弔詞を教えこまれ 頭を下げさせられるだろう
 雇われた楽隊は悲しみの曲を高々と吹奏するだろう
 この時 これらの小さな魂に
 駄菓子に似た勲章を貰うためには
 このように死ななければならないと馬鹿共が教えこむだろう。

 

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