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2013.07.23

連載 十二 タイムマシンで「生ける銃架」の十九歳に会い行く 反戦詩人・槇村浩の誕生。【詩「生ける銃架 ― 満州駐屯軍兵卒に ―」の解説】

 詩「生ける銃架 ― 満州駐屯軍兵卒に ―」を解説します。
 「銃架」は、銃を支えて保持する器具です。銃を地面に設置したり車両や船舶などに取り付けるために用いられます。ここでは、日本軍の中国東北部の満州に派遣された満州駐屯軍兵卒を兵隊を「生ける銃架」だとしています。
 【第一連】
 その兵士の一隊が高粱(コーリャン。イネ科の一年草。モロコシの一種で、実を食用、醸造用とします)の畠の中を黙々と進んで行きます。
 〈お前の影は人間の形を失ひ、お前の姿は背嚢に隠れ/お前は思想を持たぬたゞ一箇の生ける銃架だ〉。日常の幸せを求める同じ働く者の一員なのに、いまは天皇の軍隊の、殺人のための機械にされている男たち。
 その集団のひるがえす軍旗の行く先々の街や村で中国の民衆は彼らを憎しみと反抗をもって迎えています。
 軍列は奉天の城門をくぐりました。「資本家」と「利権屋」の一隊が歓呼の声をあげます。「資本家」と「将軍」は戦闘に勝ちましたが、それが日本の[労働者農民]にとって何の勝利になることでしょうか。彼らが勝とうと負けようと「中国と日本の兄弟」への弾圧はいっそう激しくなります(満洲事変が勃発後、遼寧省奉天に関東軍の土肥原賢二を首班とする奉天市政府が成立。十月十五日、趙欣伯が奉天市市長に就任します)。
 【第二連】
 日本軍の侵攻にたいし反戦のビラをはりめぐらす中国の労働者。
 彼は日本軍の兵士に見つかり銃剣で刺され、「中国共×××、万……」と呼んで息を引きとります。
 【第三連】
 しかし、次の日の暮れかた、「おれ」は帰りゆく労働者のすべてのコブシのうちに握ぎりしめられたビラのはしを見ました。電柱の前に、倉庫の横に、風にはためくビラを見また。〈同志よ安んぜよ、君が死を以て貼り付けたビラの跡はまだ生々しい〉。
 【第四連】
 銃架の影は、きょうも続いて行きます。
 〈お前の歴史は流×に彩られて来た/かつて亀戸の森に隅田の岸に、また朝鮮に台湾に満州に/お前は同志の咽を×き胸を×り/堆い死屍の上を×に酔い痴れて突き進んだ〉。 (「亀戸の森に隅田の岸に」は、亀戸事件のことです。一九二三年九月一日午前十一時五十八分、関東大震災が起きました。二日成立したばかりの山本権兵衛内閣は翌三日、東京府と神奈川県に戒厳令をしき、軍隊を動員しました。混乱の中で、朝鮮人や社会主義者が暴動をたくらんでいるというデマが流され、多くの町内で在郷軍人や青年団が「自警団」を組織し、朝鮮人に襲いかかりました。軍隊も、とくに江東方面では朝鮮人を「敵」として追いたて殺害しました。三日、被災者救援のため活動中の南葛労働会の本部から、川合義虎(二十一歳)=日本共産青年同盟委員長=と、居合わせた労働者、山岸実司(二十歳)、鈴木直一(二十三歳)、近藤広造(十九歳)、加藤高寿(二十六歳)、北島吉蔵(十九歳)、さらに同会の吉村光治(二十三歳)、佐藤欣治(二十一歳)、純労働組合の平沢計七(三十四歳)、中筋宇八(二十四歳)らが相次ぎ亀戸署に留置されました。同署では、その夜から翌日にかけて、多数の朝鮮人が虐殺されました。川合ら十人は軍に引き渡され、五日未明、近衛師団の騎兵第十三連隊の兵士によって刺殺されました。)。
 〈生ける銃架。おう家を離れて野に結ぶ眠りの裡に、風は故郷のたよりをお前に伝へないのか/愛するお前の父、お前の母、お前の妻、お前の子、そして多くのお前の兄妹たちが、土地を逐はれ職場を拒まれ、飢えにやつれ、歯を喰い縛り、拳を握つて、遠く北の空に投げる憎しみの眼は、かすかにもお前の夢に通はぬのか/裂き捨てられる立禁の札。馘首に対する大衆抗議。全市を揺がすゼネストの叫び。雪崩れを打つ反×のデモ。吹きまく弾×の嵐の中に生命を賭して闘ふお前たちおれたちの前衛、あゝ×××××!〉(「ゝ×××××」は、日本共産党です。)。
 【第五連】
 いま、戦闘で日本兵が地上に倒れ、息を引きとりました。
 〈だがおれは期待する、他の多くのお前の仲間は、やがて銃を×に×ひ、剣を後に×へ/自らの解放に正しい途を撰び、生ける銃架たる事を止めるであらう〉(「銃を×に×ひ、剣を後に×へ」は、銃を後ろに狙い、剣を後ろに構え。)。
 【第六連】
 起て満州の農民労働者。
 〈遠くアムールの岸を噛む波の響きは、興安嶺を越え、松花江を渡り、哈爾賓の寺院を揺すり、間島の村々に伝はり、あまねく遼寧の公司を揺るがし、日本駐屯軍の陣営に迫る〉。「公司」は、会社のことです。
 【第七連】
 <おう、国境を越えて腕を結び×の防塞を築くその日はいつ。〉

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