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2013.07.24

連載 二十二 タイムマシンで「生ける銃架」の十九歳に会い行く 反戦詩人・槇村浩の誕生。【「青春 献じる詞(牢獄にて)」でうたった私立土佐中学校時代】

 吉田は、のちに書いた詩「青春 献じる詞(牢獄にて)」で、私立土佐中学校でのことを書いています。

 <ひょろ長いみづきが銀木犀の傍で猫のように枝をふっている
 アルマーニュの谷間の忘れられた寺院が
 春さきのせゝらぎの中から
 こってり厚化粧して飛び出して来たように
 横肩を落してその上からのぞきこむ――
 古ぼけた銅像と校舎と庭園と運動場を
 そして持主のブルジョアが水っぽい壁の上にはりつけたレッテル――T・M・S
 ずり落ちそうな古カバンを抱え
 だぶ/\のズボンをたくしあげ
 鍔(つば)広い帽子をめくって額の生際をふきながら
 十一から十四までを僕はこゝに通った
 神経質な電鈴が、錆(さ)びついた壁のひゞわれにしみこんでは
 百人の少年たちの海燕(うみつばめ)のような心臓をひんまげては急かし立てる校舎で
 猫背になり
 僕は室の中で真直ぐに立とうとするねずみもちのような時代を過したのだ

 止めよう! 石膏のぼろ/\落ちた美術館の飾棚の上で
 首の落ちた少年像をまたまさぐるなんて!
 カラーの折り込みに苦心する級友の間で、
 ぼろ/\の帽子を目深かに引っかぶって
 僕は曲げられぬねずみもちの誇りを捨てなかった
 この幼い誇りが
 ひねくれた庇(ひさし)からふてくされた顔を面とさらすまでには
 孤独な情熱を燃やしきる鉄の火炉(ろ)が沢山まだ必要だったのだ

 おゝ人がかたくなな青春の銅扉の前にたじろいだ時
 感傷のニュアンスは何と流れるように日の旋(めぐ)りを経(へ)たしめたことだろう

 この期間のなつかしい友人たちを僕は永久に忘れない
 低い鉄柵と石楠(しゃくなげ)の並木の間で
 何となく友欲しさに交わしさ愛情は
 ヒューマニズムの昂奮に燃えて探し廻った「正義」は
 決して忘れられるものぢゃないのだ!>
 <さようなら! と僕が言った
 それは不遜な少年たちが次々に放校される順番が
 僕に廻って来た時だった
 (中略)Kが姿を見せなくなってから間もなく
 ひっぺがした上のホックと
 下から二番目のM・ボタンをかけぬ学校に
 僕は永別したのだ>
 「M・ボタン」というのは男性用のズボンの前のボタンのことです。

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